第2章 四大魔法学院対抗戦 前編 十二話 2人っきりになりました。


 その後も俺たちは新技の練習に励み、気づけば空の太陽は沈みかかっていた。


「だいぶ日が傾いてきたな。レオ、そろそろ終わりにするか?」

「そうだな。今日はこの辺にして1度学院に戻ろう。遅くなっちゃったし皆帰りは送るよ」

「いや、俺は大丈夫だ。学院から家まで近いしな。女性陣だけ送ってやるといい」

「俺も送ってもらうほど遠くないし大丈夫だ。なんならお前の屋敷も近所だからな」



 そうして俺は1度学院に戻るために転移門ゲートを開いた。

 

 俺たちが学院に戻り帰宅するため校舎の外に出るとそこに1台の馬車が止まっていた。その紋章は王家の物だ。その横には執事服を着た初老の男が立っている。俺はその男の人に見覚えがあった。


 この人確か、前にアリシア達を助けた時に馬車の御者をしてた人か?


「お待ちしておりました。アリシア様」

「バラン、待っていてくれたんですね。ありがとうございます。」

「はい、それが私の仕事ですので。サリー様やアレックス様もお久しぶりです」


 どうやらアレクやサリーとも面識があるようだ。


 そりゃそうだよな。サリーはアリシアの昔からの親友で遊ぶことも多かっただろうし。アレクにしたって公爵家の息子で王城に行く機会も昔から多いだろう。


「レオナルド様に至っては先日アリシア様共々助けていただきありがとうございます。」

「いえ、大怪我をした人がいなくて良かったです」


 俺がそう言うとバランさんは姿勢を正して頭を下げてくれた。


 なんだかゼルさんを思い出すな。


「あ、そうだバラン。迎えに来てもらって悪いのですが今日はサリーとレオ君と一緒に帰るので迎えは大丈夫です」

「かしこまりました。お2人が一緒でしたら私も安心できます。それでは、お気をつけてお帰りください。城の方でお待ちしております。晩ご飯はどういたしましょう?」

「そんなに遅くはならないので皆と一緒で大丈夫です」

「かしこまりました。それでは失礼します」


 そう言ってバランさんは一礼し馬車に乗って帰っていった。


「それじゃあ2人とも行こうか。お前たちも気をつけて帰れよ」

「あぁ、心配せずとも大丈夫だ」

「お前もしっかりと2人を送ってやれよ」

「あぁ、任せとけ!」


 そうして俺たちは門の前で別れ各々帰路に着いた。


「先にどっちを送っていこうか?」

「ここからだったらお城より私の家の方が近いし先にお願いしていいかな?」

「わかった、アリシアもそれで大丈夫?」

「はい、大丈夫です!」


 俺たちは行き先を決めるとサリーの家がある方に向かい今日あったことを話しながら歩を進める。


 サリーの家に着く頃には空も徐々に暗くなり始めていた。


「それじゃあサリーまた明日ね」

「うん、また明日。アリシア、頑張ってね」

「へ?何を?」

「だってこの後はお城までレオ君と2人っきりでしょ?」

「え、?あ…!」


 その事に今気がついたのかアリシアは顔を真っ赤にして慌ててしまう。


「頑張って、なんて言われても普通に帰るだけだよ!?」

「でも、2人っきりの時に距離を詰めないでいつ詰めるの?」

「そ、それもそうだけど…うぅ」

「とりあえずレオ君も待ってるからそろそろ行きな。明日どうなったか聞かせてね」

「え、えぇ!?」


 そう言ってサリーは走って屋敷の中に入って行ってしまった。


「アリシア、どうかした?サリーとなんか話してたみたいだけど…」

「い、いえ!なんでもありませんよ?それより暗くなってきましたし早く行きましょう!」

「え?あ、そうだね遅くなりすぎるとバランさん達も心配するだろうし行こうか」


 そうして俺はアリシアと2人並んで王城へ向かった。ここから王城までは20分も掛からないそうなのでそんなに遅くはならないだろう。


 それにしても、アリシアと2人きりって言うのはなんか緊張するな。今日あんなことがあったばかりだし。

 アリシアもさっきサリーと話してから何か様子が変だしずっと下を向いて話さないから気まづいぞ。ここは俺から話しかけた方がいいのか?


 そう思い俺が話しかけると。


「「あ、あの!」」


 見事に重なってしまった。


「あ、すいません!な、なんですか?」

「いや、こっちもごめん!大したことじゃないからアリシア言って大丈夫だよ」

「そ、そうですか?それじゃあ1つ聞きたかったんですけどレオ君のお家はどこにあるんですか?」


 俺の家?今住んでる方でいいのかな?


「俺の家?実家は王都の外の東区にあるけど今住んでる屋敷は中央区に近い東区だよ。どうして?」

「い、いえ!少し気になったので…あの、今度お邪魔してもいいですか?」

「俺の家に?それは大丈夫だけど何も無いよ?」

「いえ、以前助けていただいた時にレオ君にしかお礼を言えていなかったので。護衛の方たちに聞いたらお兄様達もいらしたと言うことですし1度しっかりお礼を伝えたかったので」

「そんな、気を使わなくていいのに。あ、でも家にカレンって言うメイドがいるんだけどアリシアとはきっと仲良くなれると思うよ」


 2人はよく似てるし、きっと気も会うだろう。何より2人とも俺なんかよりはるかに社交的だ。


「?そうなんですか?それじゃあ楽しみにしてますね。あ、レオ君はさっき何を言おうとしてたんですか?」

「あぁ、そうだ。アリシアとサリーはいつから中がいいのか気になって」

「そうですね、シルフィード辺境伯とお父様が仲がいいので昔から2人で遊ぶことも多かったんですけど初めてあったのは確か3歳の頃だったと思います。私もサリーも今はよく覚えてないですけどね」


 そう言ってアリシアは少し口角を上げて笑った。


「そっかじゃあアリシア達も幼馴染なんだね」

「確かレオ君とダリスさんも幼馴染でしたよね?いつからのお友達なんですか?」

「俺たちは5歳の時の披露宴の時だったな。こっちも父親同士が仲が良くてね。同じ子爵家で家も近いからダリスとは小さい頃からよく遊んでるよ」


 いや〜あの頃は楽しかったな。ダリスがウィルダーナの森に2人で行った時になんの害も無いうさぎの魔獣にビビったことは今でも黒歴史だってこないだ言ってたっけ。


 そんなことを思い出していると隣でアリシアが何やら呟いていた。


「小さい頃の、レオ君…小さいレオ君、見てみたいかも…」

「ん?どうかした、アリシア?」

「い、いえ!なんでもないですよ!?」

「そ、そう?それならいいんだけど」


 アレクとアリシアってたまに小声で何か言ってるんだよな。何を言ってるんだろ?


 そうして2人歩きながら話していると学院を出た時からずっと見えていた王城のすぐ近くまで来ていた。あと数分もすれば到着するだろう。


「そろそろ着きますね。」

「そうだね。あと数分もすれば着くと思うよ」


 そしてそこで会話は途切れ、またさっきのような沈黙が続いてしまい俺はやはり気まづくなっていた。

 そんな時だ、隣にいるアリシアがそこで止まった。


「?どうかしたアリシア?疲れちゃってたら少し休もうか?」

「いえ、そう言うわけでは、無いんですけど…あの、レオ君!」

「ん?」

「その!これからも、たまにでいいので、こうして一緒に帰ってくれませんか?」

「俺なんかで良ければいつでもいいけど、アリシアはいいの?俺、また今日みたいなことしちゃうかもしれないし」

「い、良いんです!私がレオ君と一緒に帰りたいんです!それに、さっきのはなんて言うか、私もその…嬉し、かったですし」


 そう言ってまたアリシアは顔を赤くして俯いてしまった。


「そう言われると、なんか照れくさいけど。うん、たまにこうして一緒に帰ろう。俺もアリシアと一緒に帰れるのは嬉しいし」

「え、えぇ!?そんな急に言われると、心の準備が…そ、その私も、嬉しい、です…」


 アリシアはさらに顔を赤くしてもう耳まで真っ赤だ目には少し涙も溜まっているのが見える。


 え!?俺なんか泣かせるようなことしちゃった!?


「ア、アリシア!?大丈夫?その、俺またなんか泣かせるようなことしちゃった?」

「いえ、これは違くてその、ホントに大丈夫ですから。レオ君は悪くないですか。あ、もう門もすぐそこなのでここで大丈夫です!今日は送ってくれてありがとうございました。それじゃあまた明日!」


 そうしてアリシアは顔を赤くさせたまま走って門の奥まで行ってしまった。


 アリシアは俺は悪くないって言ってたけど、本当に大丈夫か?もしかして俺、嫌われ…た?

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