第2章 四大魔法学院対抗戦 前編 十話 とんでもない物を見せられました。


 全員が演習場に揃ったのを確認するとメルト先生はこの後やる事の指示出し始めた。


「最初に入試上位の3人リヴァイス、アルカード、シルフィードに短文詠唱のお手本を見せてもらう。他の生徒はそれを聞いて今のクラスのトップがどれ程の実力か見ておくように」


 そうしてここに来てから突然指名された俺たち3人はキョトンとしながらも前に出て順番を決める。


 演習場には白線が引いてあり奥には人型の的が5体並んでいるその距離は約20m。魔法を使うには近すぎず遠すぎないと言った距離だ。順番決めの結果この場は入試の順位が低い者からやる事になった。


 ――はぁ、俺が1番最後か…


「それじゃあ最初は私からやるね」


 そう言ってサリーは白線の手前に立ち詠唱をして魔法を使った。


「『貫け、氷槍アイシクル・ランス』!」


 サリーの使った氷魔法は真っ直ぐ的の頭頂部目掛けて放たれ見事的の首から上を吹っ飛ばし轟音を立てて壁に突撃した。

 普段のサリーからは想像もつかないその威力にアリシアを覗いたクラス全員が目を大きく見開いていた。


「うん、こんな所かな」


 そうしてサリーは普段通りの穏やかな様子で待機場所に戻ってきた。


「次は俺の番だな」


 次はアレクの番だ。あいつ今怪しい笑みを浮かべてなかったか?何か嫌な予感がする…

 数秒後その俺の予想は当たることになる。


「フッ『燃え尽きろ、火弾フレイム・バレット』!」


 おい!今なんか怖いこと言わなかったか!?それよりなんだよあの!あんなの見た事ないぞ…


 そうして放たれた火弾フレイム・バレットはとんでもないスピードで的目掛けて飛んでいきとんでもない威力で人型の的を塵にした。


「ん、少しやりすぎたか?」


 そう言って何事も無かったかのように戻ってきたアレクに俺は今のクラス全員の気持ちを代弁した。


「お前、なんだよあの威力と青白い炎は!?どんなイメージしたらあんなことになるんだよ!」

「それは企業秘密と言うやつだ、それより次はお前の番じゃないか?レオ」

「後で、絶対効かせてもらうからな!」

「いつか…な」


 そう言って上手いことはぐらかされた俺は白線の手前まで進む。


 全く、あいつらのは派手すぎるんだよ。それに、2人とも威力は凄いけど詠唱自体はまだ短くできるからな。俺がスマートなお手本って奴を見せてやる。


 そして俺は詠唱を唱え魔法を発動する。


光射撃ライト・スナイプ


 俺は大きさを最大限まで絞り威力を上げた一撃を的の心臓を狙って放った。

 俺の放った魔法は常人では目で捕えることすら出来ないスピードで的の心臓部分に一直線に進み貫いた。その勢いは的を貫いても止まらず演習場の外壁に衝突しヒビを入れてやっと止まった。


「どうよ、このスマートな詠唱!」

「いや、レオ。お前も大概人の事を言えないぞ、何だ今の超短文詠唱からのあのサイズと威力は!」

「そ、そんなにか?威力もちゃんと抑えたんだけどな…」

「威力を抑えてあれか、しかもあの超短文詠唱で。俺はお前の頭の中がどうなってるのか知りたいよ」

「その言葉、そっくりそのまま返してやる」


 そうして俺とアレクがじゃれあっているとアリシアがこちらに駆け寄ってきた。


「レオ君!凄かったです!今の魔法、どうやればあんなに小さくて高い威力になるんですか?」

「あぁ、あれは魔法を小さく固めるイメージをしたんだ。ほら、土とかも手で強く握ると固まるだろ?その硬さと光属性の速度が合わさればあれだけの貫通力になるんだ」

「という事は、他の属性で同じことをやろうとしても光属性のように早くないとできないんですか?」

「いや、そう言う訳じゃないよ。他の属性でもどうしてそうなるか理屈さえわかっていれば同じことができるはずだ。あとはその人のイメージ力でどこまで速度を出せるかだね」


 俺がアリシアに今使った魔法のイメージを説明していると


「なるほど、魔法を圧縮し強度を上げるイメージか、その発想は思いつかなかったな…いや、待てよ。この方法を使えばあれも出来るかもしれん…」

「?アレク、今なんか言ったか?」

「いや、なんでもないこちらの話だ」


 なんて言ってたんだ?まぁなんでもないみたいだしいいか、何か大事な事ならその内話してくれるだろ。


 そんな事を考えているとメルト先生が他の生徒に指示を出し始めた。


「まぁここまでやれとは言わないが、まずは他の奴らもあの的に傷を付けることを目標にしてもらう。俺も時々アドバイスはするが基本は各々取り組んでくれ。分からないことがあったら聞いてくれて構わない。それじゃあ始めていいぞ」


 先生の合図でみんなそれぞれのやり方で詠唱を短くし、威力と大きさを変える練習を始めた。


「レオ君、さっきの魔法教えてもらえませんか?」

「うん、いいよ。確かアリシアの属性は火と水だったよね?それじゃあ水でやってみようか」

「はい!」

「まずはイメージしやすいように何か物で表そうか」


 俺は異空間収納からカバンを取り出しその中のノートを1枚切った。


「例えばこの1枚の紙で表すとこれを丸く小さくした物をさらに握り潰して全方向から力を加える感じかな。このイメージで1度やってみようか」

「はい!」


 そうしてアリシアは目をつぶり頭の中で先程見た紙をイメージする。

 数十秒後、手の平ぐらいの大きさの水弾ウォーター・バレットが浮かび上がり徐々にその大きさを小さくしていった。


 おぉ、初めてでこれだけできるのは凄いな。


「レオ君、どうですか?」

「うん、初めてでそれだけ出来れば上出来だよ。後はそれをもう少し早くできるよう自分なりにイメージしやすい詠唱が出来れば完璧だ」

「本当ですか!」

「うん、それじゃあ次はあの的に向かってなるべく速度が早くなるよう意識して今作った水弾ウォーター・バレットを打ってみよう」

「はい!」


 そうしてアリシアの放った水弾ウォーター・バレットは少し遅いが真っ直ぐに飛んでいき的にぶつかり消えた。


「あれ?レオ君の魔法より全然威力が低い、それに速度もあまり出ませんでしたし…」

「威力が出なかったのは強度の問題かな。使った魔力が少なくてそこまで強度が上がらなかったんだと思うよ」

「使った魔力、ですか?」

「うん、俺の使った『光射撃ライト・スナイプ』は光弾ライト・バレット3つ分の魔力を使ってるからね。」


 …と言ってもアリシアは飲み込みが早いし少し教えればすぐに使えるようになると思うけど。


「とりあえず今は威力を出そうとはせずに1つ分の魔力で速度を出せる様にしよう。この魔法は殆ど強度と速度が攻撃力にに繋がるからね」

「はい!お願いします、レオ君!」


 そうしてアリシアは嬉しそうに笑った。


 うっ、何だか最近アリシアの笑顔に弱くなってる気がするな…



 そんな2人のやり取りを少し離れたところで見ているアレク達3人はと言うと…


「完全に2人の世界に入ってやがるな」

「さすがの俺もあの空間を作られてはその場に留まる事はできん」

「アリシア嬉しそう〜すっごい笑顔」


 子供を見守る保護者のような目で2人を見ていた…



「レオ、少しいいか」


 俺がアリシアにお手本で見せた魔法を教えているとそう言ってアレクが俺を呼んだ。


「どうしたんだ?」

「来週は四大魔法学院対抗戦の代表を決める試合があるだろう?それに向けてお前に見せたい魔法があってな」

「俺に見せたい魔法?」

「あぁ、ちょうどいいアリシア様も一緒に着いてきてくれ」

「私もですか?」


 そうして俺とアリシアはアレクに着いていくように演習場の一番端の的の前まで来た。


「今からお前に見せるのは雷属性の魔法だ。来週の試験ではこれと似た魔法をお前の光属性でもやって欲しい」

「それは別にいいけど、その魔法って?」

「あぁ、今から見せる」


 そうしてアレクは右手に大量の雷属性の魔力を集め始めた。それは次第に縮んでいき掌に収まるぐらいの大きさまで小さくなるとその収縮を止めた。


 これは、さっき俺が教えた…でも、そのイメージを使って何をするんだ?この量の魔力を制御するのはかなりの難易度だぞ…


 そうしてアレクは『超短文詠唱』を唱えた。


「『超電磁砲レールガン』!」


 そうして発動した魔法は緑の閃光を放ち真っ直ぐにとんでもないスピードで進み的を貫いても尚、その威力は衰えずそのまま演習場の壁を突き破りようやく消えた。


 な、なんだこの魔法!一体、何が起きたんだ…?


 俺はその魔法を見て驚きのあまりしばらく放心状態になっていた。

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