第2章 四大魔法学院対抗戦 前編 八話 チームを組みました。


 ブリッツとの模擬戦が終わり控え室に戻るとそこには何故かアリシア達4人がいた。


「レオ君!お怪我はありませんか?」


 そう言ってアリシアは俺に怪我がないことを確かめるように体に触れてくる。


「うん、特にこれと言った怪我はしてないよ。それよりみんな揃ってどうしたんだ?」

「2人の戦闘が終わった途端にアリシアが飛び出しちゃって、それを追いかけてきたの」


 なるほど、つまりアリシアは俺の事を心配して急いでここまで来てくれたのか。


「心配してくれたのか?」

「当然です!レオ君は友達ですから。それに…」

「それに?」

「い、いえ!なんでもありません…」


 それに、何だろう?


「まぁ、理由はそれだけじゃないがな。レオ、さっきの魔法…あれは一体なんだ?」


 そう問いかけて来たのはアレクだ。


「あぁ、それについては皆にも説明しようと思ってたんだ」


 時間と空間魔法。それは光と闇属性魔法を極めた先に存在する究極の魔法。時間魔法は対象物の時間を操作でき、空間魔法は空間に干渉することでその場に異空間を作り出すことが出来る。


 俺は時間と空間魔法について4人にざっくりと説明した。


「3日前アリシアが俺に聞いたろ?なんでカバンを持ち歩いていないのか」

「は、はい。レオ君がいつもカバンを持ち歩いていなかったので…あ、もしかして!」

「そう、それの答えもこの空間魔法を応用した異空間収納を使ってるってわけ」


 そうして俺は皆の前で空中からバッグを取り出して見せた。


「なるほど、お前の使っていた魔法についてはだいたいわかった。だが確かその2つは光と闇属性を極めた先にあるのだろう?どんなことをすればその歳で使いこなせるようになるんだ…」

「切っ掛けは日課の魔法の特訓をしていただけなんだ。いつも魔力切れまで魔法を使って魔力量を伸ばす特訓をしてたんだけど7歳の頃かな?魔力が0になっても魔法を使おうとしたらどうなるか気になって…」


 今でもあの時の自分はとんでもないことをしたなと思う。まぁそのおかげで今この力を手に入れた訳だけど…。


「それでどうしたんだ?」


 そう聞いてきたのは今までほとんど空気と化していたダリスだ。


「あぁ、もちろん試そうとしたよ。でも魔法を使おうとしてすぐに頭に激痛が走ってな、息もしづらくなるし体も魔力切れで全く動かせないのに全身押しつぶされるような痛みでさ。あの時はもうダメかと思ったよ」


 俺が過去を懐かしむように語るとアレクとダリスは呆れたように肩を落としていてサリーに関しては若干引いていた。アリシアはと言うと…。


「もう!どうしてそんな無茶をするんですか!?」


 ものすごく怒っていた。


「い、いや昔のことだからね!?今はしてないから!」

「本当ですか…?」

「本当だよ!」

「もうそんな危ない事しないって約束出来ますか?」

「あぁ、もう絶対にしないよ!」

「それなら、いいです。」


 アリシアの圧に押し負けた俺は言い訳しようという気など全く起きずその場はアリシアのその怒りを収めることだけを考えた。


 ふぅ、何とか落ち着いてくれた。


「それで、結局その後はどうしたんだ?」


 アレクが話を戻す。


「それがさ、その後魔力が回復するまでの数分間その痛みは続いたんだけど魔力が1でも回復すると今までの痛みが嘘みたいに無くなったんだ。それで次の日もいつも通りに魔法の特訓をしてたらあることに気づいてな」

「あること?なんだ一体」

「いつもより使える魔法の回数が増えてたんだ。」

「魔力量が上がったということか?」

「それも爆発的にね。だから俺はその後も毎日同じことを繰り返した。そうすると不思議な事に人ってさある程度回数を重ねると慣れるみたいでその苦痛にも耐えられるようになってきたんだ」


 本当にあの苦痛に耐えられるようになった時は慣れって物が恐ろしく感じたな。


「なるほどな。だが、それがお前が時間と空間魔法を使える事とどう繋がるんだ?それではお前の魔力量がとんでもなく多い事の説明にしかなっていないだろう」

「俺って基本魔法の特訓をする時は光魔法ばっかり使ってたんだ。そうして毎日体が限界を超えても光魔法を使ってたら8歳の時、自分が時間魔法を使えるようになってる事に気づいたんだ。」


 そして、 光魔法を使い続けて時間魔法を使えるようになったなら闇魔法にも時間魔法とは違う何かがあるんじゃないかと思い次は闇魔法を使い続けた。そして手に入れたのが空間魔法ってことだ。


「なるほど、お前が幼少期の頃とんでもない事をしていたと言うのはわかった」

「否定はできない…」


 そうして俺の話が終わると5人で教室に戻り今日は解散することになった。


 翌日。朝俺が教室に入ると既にアリシアとサリーが自分の席に座って話していた。俺は自分の席に座ると隣の2人に挨拶をした。


「2人ともおはよう」

「おはようございます、レオ君」

「おはよう〜」

「何の話をしてたんだ?」

「そ、それは…」

「アリシアったら朝からレオ君の話ばっかりなのよ」

「サ、サリー!?」


 俺の話?時間と空間魔法のことか?


「俺の話って何の…」

「なっ!なんでもないですよ!?そ、それよりもレオ君に1つお願いしたい事があるのですがいいですか?」

「俺にできることならやるよ」

「それが実は、私の家に来て欲しくて…」


 アリシアの家って、もしかして…王城!?


「な、なんで急に?俺何かしちゃった?」

「いえ、その、以前魔物に襲われている所をレオ君に助けていただきましたよね?それを父上に言ったらぜひお礼がしたいと…」

「その事についてならもういいって言ったのに…」

「私もそう言ってはみたのですが父上がどうしてもって聞かなくて…」

「わかった。それで、いつ行けばいいんだ?」

「ありがとうございます!時間は今週末の朝9時でお願いします。時間になったら馬車が迎えに行くので」

「4日後か、了解」


 国王様に会うのは披露宴の時以来か。なんか少し緊張するな。

 その後俺とアリシアとサリーの3人で普段通り話していると先生が入ってきて連絡事項を話し始めた。


「知ってる奴もいると思うが来月は四大魔法学院対抗戦がある。来週はその対抗戦に出場する選手を決めるから覚えておけよ」


 四大魔法学院対抗戦とはルステリア王国を含めた4つの国。東のヤマト王国、南のウィルバート王国、北のゼクバス帝国この4つの国の王都または帝都にある学院のその年の新入生代表5人がトーナメント形式で対戦する毎年最初の行事だ。


「今年も例年と変わらずAクラスから代表を出すため来週までに5人1チームを組んで俺の所まで報告するように」


 そうして先生は号令をし職員室まで戻って行った。


 休み時間になり俺はダリスとアレクをチームに誘おうと2人の元に向かおうとするがそれは俺の周りにできた人だかりで遮られた。


「リヴァイス!俺のチームに入らないか!?」

「いや、俺とチームを組もう!」

「私のチームに入ってくれないかしら?」

「俺と一緒に組もうぜ!」


 な、なんだ?この状況は…俺はアレク達と組もうと思ってるんだが…。


「ごめん、俺はもうアレク達と組もうと思ってて…」

「アルカード様と!?なら俺も一緒にいいか!?」

「そうだ!空きがあるなら俺も仲間に入れてくれ!」

「私もお願い!」

「俺も!」


 などとそんな声が上がってきて俺がどうしようかと悩んでいると少し離れたところに話しかけづらそうにこちらを見ているアリシアと一緒にいるサリーを見つけた。俺は2人の元まで歩いていくとアリシアの前で止まった。


「アリシア、俺と同じチームに入らないか?」

「い、いいんですか?」

「もしかしてもう他のチームに入ってた?」

「い、いえ!その、私なんかで良ければぜひお願いします」

「ありがとう。サリーもいいか?」

「私は元からアリシアと同じチームに入ろうと思ってたから。アリシアがいいならそれでいいよ」

「よし、そうと決まれば後はアレクとダリスだけだな!」


 その後アレクとダリスを誘いこの日の内に先生に報告しに行った。


「良かったね、アリシア。レオ君と同じチームになれて」

「うんっ!」


 そうしてアリシアは満面の笑顔を浮かべていた。

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