第2章 四大魔法学院対抗戦編

第2章 四大魔法学院対抗戦 前編 七話 模擬戦を挑まれました。


 入学式の翌日。今日は自分の受ける授業を決める日である。昨日の説明によるとこの学院では1日5つの授業を受けるようで全生徒共通の授業が大きくわけて2つ魔法について学ぶ魔法学と身体強化の練習も兼ねた体育科目この2つだ。そして残りの3つは個人で自分の学びたい科目を選ぶらしい。

 今日はその残りの3つを選ぶという訳だ。


「レオ君はどの授業を受けるかもう決めましたか?」

「んーとりあえず決まってるのは数学と地理学かなアリシアは?」

「私も数学と社会学は取ろうと思っているのですが残りの1つが決まらなくて…」


 個別科目は「国学」「数学」「政治学」「地理学」「社会学」の5つから選択できそれぞれの授業の内容はこの様になっている。


「国学」国の歴史について

「数学」数の計算

「政治学」国の政治や経済について

「地理学」国や近隣諸国の地理やその土地の歴史

「社会学」法律や成人し社会に出た時のマナーなど


 国学はこの国に住む人ならばあまりとる人はいなく残りの1つがどうしても決まらない人の最終手段のようなものらしい。

 数学は魔法師団を目指す者ならば誰しもが取るものだ実践では使う魔法をよく考えなければ魔力切れを起こしてしまうそれ以外にも覚えていて損は無いのでこの学院に通う殆どの人は取っているだろう。

 逆に政治学や社会学は昨日の先生の説明だと毎年貴族しか受ける人がいないと言う。

 地理学に関しては魔法師団を目指すものに限らず軍に入ろうと思っている者には他国に行くこともあるため必須だ。


「うーん、やっぱり政治学か社会学かな。貴族として一応覚えていて損は無いしね」

「それなら私と一緒に社会学を取りませんか!知っている人がいた方が授業もきっと楽しくなると思いますし」

「そうだね、自分で考えても決まらなそうだしそうするよ。アリシアは残りの1つはどうするんだ?」

「私も地理学にしようかなって思ってます」

「え?でも王女様だし政治学の方がいいんじゃないの?」

「えっと、それもそうなんですけど…」

「ふふっ、アリシアはレオ君と一緒の授業がいいのよね」


 そう言って現れたのはサリーだ。


「サ、サリー!いつからいたの!?」

「んー『私と一緒に』の辺りから?」


 そうしてサリーはニッコリと笑ってみせた。


「ち、違うんですよ?その、一緒の授業がいいって訳ではなくて、あ、でも!嫌という訳でもなくてどちらかと言えば嬉しいんですけど、ってそうじゃなくて…」

「大丈夫、わかってるよアリシア。誰か知ってる人が1人でもいた方が気が楽だもんな?」

「そうですけど、そうじゃなくてぇ〜」

「うーん、道程は長そうだね。アリシア」

「うぅ…」

「そういえばサリーはもう決めてあるのか?」

「私も魔法師団志望だから数学と地理学は2人と同じだよ残りの1つは政治学にしようかなって」


 その後アレクとダリスも登校してきたので2人にも聞いてみたらどうやら2人共数学と地理学は取るようだ。

 そうして5人で話しているとしばらくして先生が教室に入ってきた。先生から再度授業についての説明がされ希望する科目書くための用紙が配られた。

 初回の授業は2日後でその日から本格的に学院も始まるらしい。今日はこの後学院の校舎を案内し解散となり明日は連日の疲れもあるだろうということで休講のようだ。校舎案内が終わり俺達は教室に戻る。

 教室に戻り俺が帰り支度をしていると隣にいたアリシアがふと思い出したかのように聞いてきた。


「そういえばレオ君っていつも登校する時も下校する時もカバンを持っていないみたいですけど…」

「あぁそれか、それなんだが実は…」


 そうして俺がアリシアにカバンを持ち歩かない理由を説明しようとした時だ、大声で俺の名前が呼ばれた。


「レオナルド・フォン・リヴァイス!」


 その声で俺は誰が呼びかけてきたのかだいたい察しがつき呼ばれた方へ振り返った。


「なんだ、ブリッツ。何か用か?」

「何かようかでは無い!俺はまだ認めないぞ、お前が首席なんて!」

「そんなこと言われても決めたのは学院だ俺が何かした訳じゃない。強いていえば試験を真面目に受けただけだな」

「それが信用ならないと言っているんだ!」

「って言ってもなぁ…俺にどうしろって言うんだ?」

「3日後の放課後俺と模擬戦で勝負しろ」

「勝負?」

「お前も昨日聞いているだろうこの学院の説明を」


 確かに昨日説明された中に模擬戦という話はあった。放課後は通常の演習場や体育館の隣に併設された野外演習場が解放されるため自由に使ってた魔法の練習や模擬戦を行っていいと言う話だ。

 ただ模擬戦の場合は事前に担任の許可が必要で立会人となってもらわなければいけないらしい。


「その模擬戦でお前が俺に勝てれば首席として認めてやろう」


 別にお前に認める認めないと言われても正直どちらでもいいとは思ったが今そう言ってしまうとまた今後同じような事になり面倒くさそうだったため俺はその申し出を受けることにした。


「わかった、するよ模擬戦」

「それでいい、メルト先生には俺から伝えておこう。逃げるなよ」

「おう、心配すんな。逃げも隠れもしねぇよ」


 そうしてブリッツは教室を去っていった。


「はぁ、面倒臭いことになった」

「なんなんですか、レオ君に対するあの態度!許せません!」


 そう言って何故か俺ではなくアリシアがご立腹の様子だった。


「お前も面倒な奴に目付けられたな、レオ」

「バーン!お前もAクラスだったのか!」


 そう声をかけてきたのは入学試験で俺とブリッツと同じグループだったバーンだ。


「おう!って一応昨日もいたけどな!」

「悪い、代表挨拶で頭がいっぱいで全く気づいてなかった」

「うん?それならまぁ仕方ない…のか?」

「レオ君のお知り合いですか?」

「あぁ、紹介するよ。入学試験で同じグループだったバーンだ」

「バーン・ダイスだ。よろしくな!」

「そうだったんですね。私はアリシア・フォン・ルステリアです。よろしくお願いします」


 そう言ってアイリスが挨拶をするとバーンは何故か固まっていた。


「ルステリア、ってもしかして…王女様か!?」

「え、ええ、まぁ…」

「それは、その、すいませんでした!王女様とは知らなくて…」

「大丈夫ですよ。この学院では身分の差なんて無いんですから皆さんと同じように話してもらって構いません」

「そう言って貰えると助かるぜ。敬語ってのはどうにも苦手でよ」


 バーンはほっとしたように頭を掻き「それじゃあな」と言って帰っていった。


「ところでレオ君。さっきは何を言おうとしてたんですか?」

「さっき?あぁ、カバンのこと?」

「はい、何か言いかけてましたよね?」

「あー、うん。いい機会だし3日後の模擬戦の後アレク達もいる所で話すよ」

「そうですか、楽しみに待ってますね!」

「楽しみにするほどのことでもないと思うけど、うん。待ってて」

「はい!」


 アイリスの登下校は馬車で迎えが来てるようなので校門の所まで一緒に歩きそこで別れた。


 3日後。俺はブリッツとの約束のため野外演習場の待機場所にいた。後数分もすれば始まるだろう。応援席にはアリシア達4人もいるようだ。

 時間になり俺が演習場に入場すると反対側の通路からブリッツも入場してきた。


「逃げなかったことは褒めてやる」

「俺は約束は守る男だからな」

「チッ、今にその余裕ぶった態度も取れなくしてやる」


 その後メルト先生が俺たちのいる演習場中央の方にやってきて模擬戦のルールを説明した。


「お前ら準備はできてるみたいだな。それじゃあルールの説明をする。って言っても特にこれと言って細かいルールがある訳じゃないがな。」


 そう言ってメルト先生は模擬戦のルールを説明しだした。


「まず、勝敗の決し方だが先に相手を戦闘不能もしくは降伏させた方の勝ちとする。魔法の使用はもちろん有りだが武器の使用は無しだ。ただし、魔法で作った武器に関しては有とする。要は自分で持ち込んだ武器はダメですよってことだな。ルールはこの2つだけだ。簡単だろ?」


 そうして説明を聞いた俺たちは先生の指示に従い指定された位置に立つ。


「それでは今から、レオVSブリッツの模擬戦を開始する。始め!」


 先生の合図で模擬戦が開始された。先に動いたのはブリッツだった。


土弾連射ロック・ガトリング!」

光剣ライト・ソード


 無数に放たれた土の弾丸をレオは身体強化を発動させ光魔法を体に纏いその全てを切り落とした。


「チッ、ならばこれならどうだ!『疾風の矢ウィンド・アロー』『土槍ロック・ランス』!」


 そうしてブリッツは複数の風の矢と2つの土の槍を同時に発動させるが


(おぉ、なかなかやるな。けど)


闇穴ダーク・ホール


 レオは先程と同じように無数の矢を光剣ライト・ソードで切り落とした、発動した闇穴ダーク・ホールで2本の土の槍を引き寄せこちらも同様に破壊し無効化した。


「これで終わりか?ブリッツ。なら次はこっちから行くぞ!」


 そう言うとレオは一瞬でブリッツの背後に回りこむ。それに気づいたブリッツは咄嗟に土魔法で壁を作るがそんなのお構い無しとばかりにレオは身体強化と光魔法で強化された拳で土の壁ごとブリッツを。土の壁は砕け散り騒音を立てて崩れ去る。ブリッツはと言うと風魔法で自信を吹き飛ばし直撃は免れていたようだ。

 

(クッ、今の攻撃をまともに喰らう訳にはいかないな。身体強化をかけたとしても耐えられる確証が無い)

(今のを避けるか、完全に裏を着いたと思ったんだけどな)


 そうしてレオはブリッツが体制を立て直す前に動く。


光弾ライト・バレット


 空中に作り出された10発の光の弾がブリッツに襲いかかる。

 ブリッツは土の壁で防ごうとするが想定していたよりもその速度は早く数発食らってしまう。


(威力は低いがこの速さは厄介だな。この速さに付いていくには俺もあれを使うしかないか…)


「いいだろう、レオナルド・フォン・リヴァイス。貴様のその実力だけは認めてやる。だが、この模擬戦勝つのは俺だ!」


 そうしてブリッツはレオの前から消える。否、消えたのでは無い。移動したのだ、レオの真後ろに。


(なっ!?)


 それに気づいたレオはすぐにブリッツから距離を取る。


(今の速さ、そして奴の属性から考えるとすれば有り得るのは一つ)


「なるほど、雷属性か」

「あぁ、その通りだ。雷の速さも光速。その雷を体に纏えばお前と同じ速度で動ける。見せてやろう俺の本気を!」


 正直、今のレオの状況はかなり厳しいと言えるだろう。


(奴が俺と同じ速度で動けるようになったなら俺が優位を保てていた速度という武器が通用しなくなる。

そうなれば魔法の撃ち合いになったとしても威力の低い俺が確実に不利。)


 魔力の消費量も光と闇属性を使うレオの方が圧倒的に多くこのまま守りに徹したとしてもジリ貧だろう。


(仕方ない、俺もあれを使うしかないか。)


「やるな、ブリッツ正直ここまで追い込まれるとは思ってなかったよ。だから俺も取っておきを見せてやる!」


 そうしてレオは10発の光弾ライト・バレットを発動した。


「お前が本気で来るって言うなら俺も本気で相手しよう。ここからが本番だ!」


 そう言ってレオは発動した光弾ライト・バレットをブリッツに向かって放つ。ブリッツがそれを雷魔法で迎え打とうとしたその時。ブリッツの目の前が突然歪んだ。そしてその歪みに引き込まれるようにレオの放った魔法はまっすぐ飛んできてブリッツの目の前で

 ブリッツは戸惑いながらも発動した魔法の標的をレオに移し放とうすると、背後から突然消えたはずのレオの魔法が飛んできた。

 ブリッツは咄嗟のことで反応が遅れてしまいそのまま10発の光弾ライト・バレットに直撃してしまい倒れる。


「ガハッ!貴様、一体何をした…」

「何をしたって、魔法を使っただけだけど?」

「何だと?だが確かに今貴様の魔法は消えたはずっ!」

「それが不思議な事に消えてないんだよな」

「何?一体どういう…」

「時間属性と空間属性、聞いた事ないか?」


 レオがそう言った瞬間観客席がザワつく。


「時間と空間だ、と?そんな属性見たことも聞いたことも…」

「思わなかったか?基本の4属性には派生があるのに何故光と闇には無いのかって」

「それは…」

「俺は考えたんだ。何で光と闇属性には派生となる属性が無いのか。でもその時は答えは見つからなかった。けどこの2つにも派生に変わる属性が確かにあった。それが時間と空間属性、光と闇魔法を極めた先にある究極の魔法だ」

「ク、ソ…次は、必ず、俺が…勝つ!」


 そう言ってブリッツの意識は消えた。どうやら最後に食らった10発の当たりどころが思いのほか悪かったようだ。


「あぁ、いつでも受けてやる。」 


 そして先生が俺の腕を掲げ告げた。


「勝者、レオナルド!」


 その言葉で俺とブリッツの模擬戦は決着した。

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