第1章 幼少期編 二話 練習開始
あれから2ヶ月。俺は屋敷の裏庭で魔法の練習をするのが日課となっていた。
日課を初めて1ヶ月ぐらいは毎日すぐに魔力が無くなって動けなくなっていたけど最近では少しずつ魔力切れまでの時間が長くなってきている。
後からわかったことだけどどうやら光魔法と闇魔法は他の属性よりも魔法を使う際に使用する魔力量が少し多いようだ。
だから魔力切れするのも早く魔力量が増えるのも早いようだ。
一般的にも知られている事だが魔力量は幼い頃に魔法を使えば使うほど増えるらしい。何故幼い頃に成長しやすいかと言うと体の成長と似ていてまだ魔力量の総量が成長しきっておらず日に日に増え続けているからだと本に書いてあった。
これはロイス兄さんに聞いた事だけど人の筋肉は使って負荷を与えるほど強く鍛えられるらしい。
魔力量もそれと同じで魔力を使い切ってもさらに使おうとして負荷を与えれば増えていく仕組みのようだ。使用人で元魔法師団のゼルさんにも聞いたから間違いないだろう。
けどゼルさんに聞いた時同時にこのやり方はかなり危険だと言うことも教えてもらった。
どうやら増えやすいけどリスクも多いらしくどの程度伸びるかは個人によって違うらしい。基本的には全体の3分の1程しか増えないためこのやり方をする人は余りいないようだ。
それ以上伸ばすためには才能にも大きく左右されるがより過酷な努力も必要になるようでそんなことを子供の頃からやろうとする人ややらせる親は当然いない。
確かに、魔力が無くなればしばらくの間歩くこともできないって本で読んだことがあるしその状態で無理やり魔法を使う事はどうなっちゃうか分からないな。
けど俺は、あの日の夜に決めたんだ絶対に魔法師団に入ると。
その為には魔法学院に入学して勉強をするのが1番の近道だ。
どんなに辛いことでも耐えなければ強くはなれないんだ。本当に行き詰まった時の為にこの方法も覚えておこう。
ただでさえ光属性と闇属性は他の属性よりも消費魔力が多いんだ。戦ってる途中に魔力が無くなって動けなくなったらお終いだもんね。
同世代の子で光や闇属性の子は少ないだろう。もしかしたらこの国には同世代で光か闇属性を持つ子は一人もいないかもしれない。魔法学院入学まであと10年、それまでにこの2つの魔法を完璧に使えるようにならないと!
他の魔法よりも分からない事が多くて同じ様にやってたら同世代の子達には置いていかれてしまうかもしれない。
そうと決まれば早速練習だ!
光と闇魔法の他の魔法より良いところは消費魔力が多い代わりにその分魔力切れも早く魔力量が他の属性よりも早く増える所だ。
悪い所は他の属性よりも使える人が少なく参考にできる人もいないし本も少ない事。出来ることを増やしたいなら自分で見つけていくしかない。
今俺が使える魔法は
他にできることといえば明かりを付けたり目くらましをしたりするくらいかな? 目くらましは実戦じゃないと使えないし普段使えるのは光属性の方がおおいか。
現状できることはこの2つの魔法と光属性を上手く使ってひたすらに魔法を使い魔力量を増やすこと。
魔法が使えなくなったら回復するまでは屋敷の図書館で魔導書や魔法についての本を読んで勉強しよう。
そうして俺が裏庭で木で作った的に向かってひたすらに魔法を放っていると少し遠くから声が聞こえてきた。
「レオ様ー! お父様がお呼びです!」
そう言いながらカレンが息を切らして走ってきた。
父さんが? 一体なんの話だろう……
「わかった! 今行くよ!」
そうして俺は父さんのいる書斎まで急いで向かう。
◇◆◇◆◇◆
書斎に着いて扉をノックすると父さんから返事が返ってきた。
「レオか? 入っていいぞ」
「失礼します。父さん、カレンから話があるって聞いて来たんだけど……」
「あぁ、話と言うのは次の月初めにある王城での披露宴についての事だ。話ぐらいならお前もアラン達から少し聞いているだろう?」
確か、貴族の家の子が5歳になったら出なくちゃいけないパーティーだったような?
「はい、アラン兄さん達からも話は少しだけ聞いてます」
「それなら良かった。俺は毎年当主として参加しているが今年はレオも5歳になったからな、もちろんお前にも参加してもらう。今日呼び出したのはその時の衣装合わせや準備について母さんたちとも話しておいてもらおうと思ってな」
「わかった。母さんたちには俺から伝えた方がいいかな?」
「いや、俺が伝えておこう。披露宴まであと3週間、時間はまだあるからなゆっくり話し合ってくれ」
「はい」
「それともう1つ。最近裏庭で魔法の練習をしているようだな。進捗はどうだ?」
「それについては俺の属性は他の属性よりも消費魔力が多いから魔力量をあげるためにひたすら魔法を使ってます」
「そうか、くれぐれも怪我のないようにな。お前の気持ちも嬉しいが親にとって何よりも大事なのはお前自身だ」
「うん。でも心配しなくて大丈夫! 時間の空いている時はカレンも付いてくれてるから」
「そうか、それならいいのだが…」
「話はこれだけ?」
「あぁ、時間を取らせて悪かったな」
「いえ、それじゃあ失礼しました」
そうして軽くお辞儀をして俺は書斎を後にした。
レオが去った後書斎ではジンと執事のゼルが話している。
「全く、子供は少し目を離したと思ったらどんどん成長しているな」
「私から見てもつい最近まであんなに可愛かったレオ様がいつの間にか逞しくなっておいででとても嬉しい限りです」
「アランもレオぐらい逞しくなってくれれば安心して当主を任せられるのだがな」
「あの性格こそがアラン様の魅力ですあの人だからこそ着いてくる人がいるに違いありません」
「そんなものか……?」
「そんなものですよ」
そう言ってゼルは微笑み父さんも笑いながらしばしの談笑を楽しんだ。
「そうだ、リセナにも披露宴の事を伝えておかねばな」
「でしたら奥様をお呼びいたします」
「あぁ、頼む」
「かしこまりました」
ゼルは一礼して書斎を跡にした。
その頃レオはと言うと書斎を出たあと裏庭に戻り再び魔法の練習をしていた。
――数十分後――
「ふぅー、今日はこれくらいかなもうクタクタで動けないし、少し休んだら図書館に行こう」
そうして少し休んだ後レオが図書館に向かうとどうやら先客がいたようだ。
「あれ? アラン兄さんどうしたの?」
「あぁ、レオか俺もあと2年で父さんの下で働くことになるだろ? だから時間のある時はここで外交や必要になりそうなことについて勉強してるんだ」
この国では18歳から成人で貴族の長男は将来家を継ぐために成人してから数年間は当主の下で働くことになっている。アラン兄さんも今年で16歳になったから今から将来のために勉強しているようだ。
「そう言うレオはどうしたんだ? この時間に図書館に来るなんて珍しいじゃないか」
「俺も魔法について勉強しに来たんだ。さっきまで父さんに呼ばれてて今日は少し遅れちゃったんだ」
「そうだったのか。順調みたいで良かったよ。それにしても、レオは凄いな俺なんかよりも全然しっかりして見える」
「そうかな? 俺にとってはアラン兄さんも十分しっかりとした兄さんだよ」
これは全て本心だ。アラン兄さんはあぁ言うが俺から見ればアラン兄さんだって十分凄い人だ。
確かに普段は少し頼りないけどこうして今も将来をしっかり考えているし、母さんから聞いた話によれば小さい頃から貴族の長男としてずっと父さんにくっついて内政について勉強していたらしい。この人ほど真面目な人は同じ世代にもそんなにいないだろう。
「お前にそう言って貰えると俺も嬉しいよ」
アラン兄さんはそう言って少し笑ってみせた。
その時、俺はアラン兄さんに聞きたいことがあるのを思い出す。
「そうだ、アラン兄さん。1つ聞きたいんだけどアラン兄さんの時の披露宴ってどんな感じだった?」
「披露宴? 俺の時はとにかく大変だったなぁ。まだ子爵になる前、男爵の頃だったから今以上に一部の上級貴族の人の目が痛かったよ」
この国では身分差別は罰せられているがそれでも中には納得出来ない人がいるみたいで特に一部の伯爵以上の人にその傾向が強いらしい。
「そっか、そうだったんだ」
「けど、それでも父さんは全く嫌な顔せずなんと言われようとも堂々としていたなぁ。子供の俺には凄くかっこよく見えたのを今でもよく覚えているよ」
「やっぱり、父さんは昔からかっこよかったんだね」
「あぁ、その後俺がなんで父さんはあんなに酷いこと言われて平気なのか聞いたら父さんなんて言ったと思う?」
「なんて言ったの?」
「『俺は元平民だからああやって言われてしまうのも仕方がないんだ』って言ったんだ」
父さんは元は平民で魔法師団に入っていた。その時に大きな功績を挙げて貴族になったと聞いている。
「あ、でもその後にこうも言ってたな」
『我慢してる訳ではない、どれだけ蔑まれようとも父さんは元平民でそれが事実だからそう言われるのは仕方ないんだ。でも俺は平民に生まれたことを後悔してない、だから嫌じゃないんだ。けどなそんな父さんにだって嫌なことはある。
俺の子供だからってお前達までそう言われる事だ。だってそうだろ? 俺は元平民だけどお前たちは違う。俺が貴族になってから産まれてきたお前たちは正真正銘の貴族だ、馬鹿にされる言われなんてない。だから父さんはお前たちがバカにされないように人前では堂々といようってお前が産まれた時に誓ったんだ。』
へぇ、そんな事を言ってたのか。
「その時は本当に嬉しかった。父さんが俺達の事をどれだけ大切にしてくれてるのか子供だったけどわかったよ」
さすがは父さん、やっぱりかっこいいな。
「それを聞いた時俺思ったんだ。あぁこの人が父親で良かったって。だから俺も人前に出る時はなるべくしっかりしようとして人一倍勉強もするようになったんだ。まぁ今でも人前は緊張するけどね」
そう言いながら兄さんは少し苦笑していた。
「やっぱり俺、父さんみたいな凄い魔法士になりたい。そのために早速魔導書探すぞー!」
「あぁ、お互い頑張ろうなレオ。って聞いちゃいないか」
そうして俺はその後も夕飯の時間にカレンに呼ばれるまでずっと魔導書や魔法学についての本を読み漁っていた。
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