第11切「ピザランド創設者・沢地 豪」
コンコンコンコン…
「あ?誰だ?」
男は突然の訪問者に心当たりがなかった。
「まさかとは思うが、
男は犯罪者だった。
犯罪者であるが故に男は山奥の小屋で隠遁生活をしていた。
コンコンコンコン…
「ちっ……」
ゴトッ…
カタン…
男は訪問者に心当たりがなかったものの、もし警察だった場合に備えて床下にある二畳半ほどの隠し部屋に入ると、耳を澄ませた。
(何者だ?一人二人なら殺しちまってもいいが、万が一それで山狩りが始まったらめんどうだからな…)
男が予期せぬ訪問者の正体を考えていた時だった。
「ピザのお届けに参りました…」
「!!!」
訪問者の声が頭上から聴こえた。
男の気づかぬうちに訪問者は部屋へと入ってきていた。
(こいつ…今、確かにピザのお届けに参りましたと言いやがった…)
男にとっては訪問者が音も立てずに施錠してあったはずの室内に入ってきたことなどは些末なことだった。
そんなことよりも、訪問者の発言が気になっていた。
ピザのお届けに参りました…
これは男が二十数年前に運営していたピザランドという会社の裏メニューの合言葉だった。
ギシ…
「ピザのお届けに参りました…」
(くそ!こいつまさか丸山か?なぜ丸山がこの場所を!?)
男は訪問者の正体が丸山という人物であると断定した。
ギシ…
「ピザのお届けに参りました…」
ギシ…
男の頭上から訪問者の歩く気配と床板の軋む音がする。
ギシ…
「ピザのお届けに参りました…」
男の頭上から訪問者の声がする。
ギシ…
「ピザのお届けに参りました…」
(ちっ!この野郎…ナメやがって。出てってぶっ殺してやろうか…)
男は訪問者に対して敵意をむき出しにして隠し部屋から飛び出そうとした。
その時だった。
ドンドンドンドン!
「!!!」
男の真上で激しく足踏みをするような音が響いた。
(ちっ!気づきやがったか?…まずいな…上に物置かれたら…)
男は訪問者が隠し部屋の存在に気がついて、出入口に重しを置かれることが気がかりだった。
(くそ!考えてる暇はねえ!さっさと…)
男が隠し部屋から飛び出そうとした瞬間、それは始まった。
ドンドンドンドン!
「ピザのお届けに参りました!」
ドンドンドンドン!
「ピザのお届けに参りました!」
ドンドンドンドン!
「ピザのお届けに参りました!」
ドンドンドンドン!
「ピザのお届けに参りました!」
「!!!」
それは、男がいる隠し部屋の上下左右、ありとあらゆる方向から響いていた。
壁や床を叩かれるような音とピザのお届けに参りましたという大きな声が、わずか二畳半ほどの隠し部屋の中で反響するように響き渡っていた。
そして、それはどんどんと激しくなっていった。
ドンドンドンドン!
「ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!」
ドンドンドンドン!
「ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!」
ドンドンドンドン!
「ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!」
ドンドンドンドン!
「ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!」
ドンドンドンドン!
「くそ!うるせえ!黙りやがれ!」
その現象に面食らっていた男が、怒鳴ると途端にその現象は止まった。
「へっ!黙りやがったか。さてと…今出ていってやるからまってろや!」
男は不可解な現象を自ら止めたと思っていた。
そして、頭上にいる訪問者へ声をかけると隠し部屋を出ようとした。
その時だった。
「ピザのお届けに参りました…」
それは隠し部屋の中で聴こえた。
「ピザのお届けに参りました…」
それは男のすぐ側で聴こえた。
「ピザのお届けに参りました…」
それは男の耳元で聴こえた。
「ピザのお届けに参りました…」
それは男の頭の中で聴こえた。
「ピザのお届けに参りました…」
それは男の口から聴こえた。
「ピザのお届けに参りました…くそ!なんだこれ!ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ざけんな!やめやがれ!ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…この!ふざけピザのお届けに参りました…だまりやがピザのお届けに参りました…勝手に人の口から言葉をピザのお届けに参りました…やめろ!くピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…なピザのお届けに参りました…やピザのお届けに参りました…もピザのお届けに参りました…くちピザのお届けに参りました…がピザのお届けに参りました…勝手ピザのお届けに参りました…に動ピザのお届けに参りました…くピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ぐピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!息がピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!出来ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!なピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!いピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りまじ…だ…ぎゅげ………」
男は自らの意思に反して呼吸も出来ぬまま同じ言葉を言い続け、最後は自ら舌を噛んで死んだ。
ギシ…
ギシ…
ギシ…
男の頭上からは床の軋む音が響いていた。
ギシ…
「沢地豪…ピザのお届けに参りました…」
ギシ…
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