第4切「部屋コン」
「ピザのお届けに参りました…」
「は?」
俺の部屋で、俺を含めた男女6人で部屋コンをしている時に来た客は、ピザを届けに来たと言った。
しかし、俺はピザを頼んだ覚えはなかった。
他の5人に聞いても答えは同じだった。
「あのさ、おたくさ、うちは誰もピザなんか頼んでないんだよね。他の部屋と間違えてない?」
「ピザのお届けに参りました…」
インターフォンの向こうの招かれざる客は再びピザのお届けに来たと言った。
「ピザのお届けに参りました、か。おたく、それだけ言っててなんか意味あんの?新手の詐欺かなんか?だとしたらうちにくるのはハズレだから他に行きな。じゃな。」
「ピザのお届…………」
俺は言うだけ言ってインターフォンを切ったが、そいつは切るときもまだピザのお届けに参りました…という言葉を伝えようとしていた。
「おー、どうした?結局、ピザ屋だったのか?」
「つか
「アレじゃん?ウーパールーパーみたいなやつ?あれならやってんじゃん?」
「ウーバーイ●ツな。」
「ぷっ、ウーパールーパーって…ほんとバカだなあ
俺がインターフォンを切ったのを見て、部屋コン参加者の
彩の発言にみんなで笑ったあと、
「んで、ピザ屋は何か言ってたのか?用件は?」
「なんかよくわかんねえ…向こうの奴さ、ピザのお届けに参りましたしか言わなかったんだよ。」
「なんだ、届けて貰っちゃえば良かったじゃん。代金先払いかもしんないし。ウーパーでもなんでも良いからさ。」
「だからウーバーな。」
その時だった。
「ピザのお届けに参りました…」
「え?なに急に?どした?」
俺は小さな声でピザのお届けに参りました…と呟いていた。
俺の一番近くにいた
「ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…」
「おい!どうした!大丈夫か?」
ピザのお届けに参りました…と繰り返す俺を心配して
「ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…」
「ひっ!」
「ちょっ、冗談やめてよ!」
「ッ!!!」
狂った様にピザのお届けに参りました…と繰り返す俺を見て、
「おい!マジでどうした!とまれよ!」
「
俺はピザのお届けに参りました…と繰り返すと共に全く自覚がないままに体を動かしていた。
部屋にある窓には反射した俺の姿があった。
力なくだらんと下げた手をタコのようにバタつかせ、首を前後左右に激しく揺らし、口をパクパクさせているその俺の姿はまるで壊れた腹話術人形の様に見えた。
(はははは…なんだこりゃ…)
俺は反射した窓にいる自分の姿を見て思わず笑ってしまったつもりだった。
だが、それは声にはなっていなかった。
「ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!」
俺はただひたすらにそう言っていた。
制止しようとする
ドン引きする
「ピザのお届けに参りました!」
震えている
「ピザのお届けに参りました!」
泣きじゃくる
「ピザのお届けに参りました!」
未だに制止しようとする
「ピザのお届けに参りました!」
もう何がなんだか判断できない
「ピザのお届けに参りました!」
反射した窓にいる男に向けて言った。
「ピザのお届けに参りました!」
気がつくと、朝になっていた。
部屋コンが
部屋の隅では
「ったく。どいつもこいつも飲み過ぎだぞ。特に
俺は途中から記憶がなかったが、飲み過ぎている様子の皆と散らかり放題の部屋を見て愚痴を呟いていた。
その時、インターフォンが鳴った。
応対すると、相手はこう言った。
302号さん、ご利用ありがとうございました。
またお届けに参ります。
俺には何の話か全くわからなかった。
ただ、取り敢えず俺の部屋が302号室なのは確かだ。
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