第2切「元ヤンの女の子」

「どうか契約ってくれませんかね~?」


 あたしは今から5分前に来たが鳴らしたインターフォンを、頼んでいたの宅配と勘違いし、のオートロックの扉を開けてしまったことを後悔していた。

 扉を開けたことにより、新聞屋は部屋の前まで来て、2度目のインターフォンで私はの玄関で新聞屋そいつと対面していた。


「だかららねっつってんだろ?」


「お願いしますよ~。今ならこのも付けますから~。」


「っ!…ざけんな!」


 正直、は欲しかった。


 ピンポーン…


「おい!から帰れ。」


 そう言うと、新聞屋はしぶしぶ帰った。

 そして、1人になったあたしはドアフォンを取った。


「ピザのお届けに参りました…」


「おー、今開けっから。」


「ピザのお届けに参りました…」


「分かったから上がってこい。」


「ピザのお届けに参りました…」


「チッ……もう切っかんな、さっさと中入んねーと。」


 ピンポーン…


 インターフォンが鳴った。


 の扉を開けると、そこにはピザ屋の姿はなかった。


 ピンポーン…


 またインターフォンが鳴った。


(そういや、この音はの音だな。)


 マンションのインターフォンは、で違う音だった。


「あのクソピザ屋、まだに居やがんのか…」


 あたしは苛々しながらドアフォンを取った。


「ピザのお届けに参りました…」


「チッ……ウダウダやってねぇでさっさと来い。」


「ピザのお届けに参りました…」


 あたしを無視しの鍵を開けた。


「ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…」


 は同じことをずっと繰り返していた。

 我慢ができなくなったあたしは、上着を羽織ると、直ぐにに向かった。


「クソ!逃げやがった…ん?」


 そこにはの姿はなく、あのの物と思われる荷物が散乱していた。


(……捨ててあるっぽいし、良いよな。……拾いに来たら返しゃいいし。)


 あたしはそこら中に散乱している物の中から拾って部屋に帰った。


 キンコーン…


 部屋に着くなり、インターフォンが鳴った。

 あたしは直ぐにそれに出た。


「ピザのお届けに参りました…」


「なっ!」


「ピザのお届けに参りました…」


(コイツ…マジで頭れてんじゃねぇのか?)


「ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…」


 あたしがどう対応するか悩んでいる間も、そいつはずっとと繰り返していた。


「ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…」


「うるせェ黙れッ!」


 怒鳴りながらあたしはドアフォンを切った。

 しかし、直後…


 キンコーン…


(クソ!)


 キンコーン…


(うるせェ!)


 キンコーン…


(!!!!!)


 連続3度目、累計4度目のインターフォンのあたしはやっと気づいた。


(この音はだ…)


 キンコーンという鐘の様な音は、のインターフォンの音だった。

 しかし、あるに気づいたあたしはインターフォンに出ることも、玄関の扉を開けることも出来ずにいた。


 キンコーン…


(んだよコレ!やめろよ!)


 キンコーン…


(イヤ!)


 キンコーン…


(イヤ!イヤ!イヤ!イヤ!)


 キンコーン…


「ピザのお届けに参りました…」


 あたしがドアフォンを取ってないのには話し出した。


「ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…」


「ひいッ!いやぁァァァっ!」


 思わず悲鳴上げていた。

 あたしだったが、子供の頃からが大の苦手で、一気にからになっていた。


「ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届けに参りました…ピザのお届…………」


「……………終わったの?」


 突如、その声が止み、あたしは思わず子供のようにいた。

 すると、問い掛けに答えるように再びは始まった。


「ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りましたピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!ピザのお届けに参りました!」


「もうやめてッ!!!もう2度とピザは頼まないから許してッ!!!」


「ピザ………………………………」


 最後はまで言って声は止んだ。


 ピンポーン…


「ひいッ!!!」


 ピンポーン…


「……あれ?……この音……」


 ピンポーンという電子音はのインターフォンの音だった。


「は……はい…」


 あたしは覚悟を決めてドアフォンを取った。


「お待たせしました。ご注文のピザのお届けに参りました。」


 相手は、の配達員だった。



 その後、ピザを喰いながらを思い出さないようにしているときだった。



 テントーン…



 LI○Eがので、あたしはピザを喰いながら片手間に開いてみた。




 302号さん、またのご利用をお待ちしております。

 次こそ、必ず弊社のおいしいピザをお届け致します。




 よく見るとそれは、全く知らない奴からのメッセージだった。


 あたしの部屋はだった。


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