61 雨の日が好きだった。雨の音を聞いていると、なんだかすごく心が安心した。

 雨の日が好きだった。雨の音を聞いていると、なんだかすごく心が安心した。


「さて、ご飯も食べましたし、これから畑仕事をしましょう」

 ふふっととても楽しそうに笑いながら白藤の宮は言った。

「畑仕事ですか?」

 空っぽになった食器を洗いながら、若竹姫は言った。

 朝ごはんに使った食器はすべて漆塗りの高価なものばかりで、白藤の宮の食器には金箔の鶴の絵が、若竹姫の使った食器には亀の模様が入っていた。

「そうですよ。まさか、ただでご飯が食べられるとは思っていませんでしたよね」

 若竹姫を見て、にっこりと笑って白藤の宮はいう。

 そんな白藤の宮を見て若竹姫は、「はい、もちろん」と小さく笑ってそう答えた。

 それから二人はお互いの顔を見ながら声を出して笑い合った。


 畑仕事をするための着物に着替えをした二人は鳥の巣の外に出た。

(白藤の宮はいつものように頭に白い頭巾を巻いていた。同じように白い襷を巻いて、着物もやはり、真っ白な着物を着ていた)

 若竹姫は白藤の宮に用意してもらった鮮やかな緑色の着物に着替えをした。頭には紺色の頭巾を巻いて、同じように紺色をした襷を上半身に巻いていた。

 外は(雨は止んでいたけど)あいにくの曇り空だった。

 そんな曇った空を、鳥の巣の外に出た若竹姫はしばらくの間、一人でぼんやりとただ、眺めていた。

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