50

 みちるは台所を出ると、廊下で一度、小さく自分の両頬を自分の両手で叩いた。

 ぱん、と小さな音がする。

 それからみちるは顔を洗うために、鳥の巣の庭にある小さな井戸のところまで移動をした。

 井戸のところには小さな蛙が一匹いた。

 みちるは井戸から水を汲み上げると、そのとても冷たい水で自分の顔を洗った。(白藤の宮の言う通りに、桶の中に映るみちるの顔はとてもひどい顔をしていた)

 それからみちるは、部屋に戻って、着替えをする。

 それからみちるは台所に戻ると、(ぐるりと着物の袖を巻き上げてから)早速白藤の宮のお手伝いを始めた。

「目は覚めましたか? みちる」

 みちるを見て白藤の宮はいう。

「はい。もちろん」

 と白藤の宮を見て、ご飯をしゃもじでまぜながら、白い湯気の中で、みちるは言う。

 二人は出来立ての食事を昨日、晩御飯を食べた部屋まで持って移動をする。

 それから二人は一緒に「いただきます」をして、それから少し遅めの朝ご飯を一緒に食べ始めた。

 そこで、こほっと一回、白藤の宮は小さく咳をした。

 その小さな音を聞いて、手に持った箸を止めて、みちるはその顔を白藤の宮に向ける。

 みちるはとても不安そうな顔をしている。

 その反面、(まるでみちるの分も余計に二人分笑うようにして)白藤の宮はにっこりと笑って、そんな自分を見ているみちるの顔をじっと見つめていた。

 それから白藤の宮は何事もなかったかのように、箸を動かして、焼きたての魚の切り身を自分の口の中に入れた。

「美味しい」

 と白藤の宮はそう言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る