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 鬼さん、鬼さん。

 こっちにおいで。

 にっこりと笑って、口だけを動かしてそんなことを百目の鬼はみちるに言った。

 見るといつの間にか、百目の鬼の顔は玉の顔から、今度は別の人の顔に変わっている。

 それはみちる自身の顔だった。

 まるで小さな鏡を見ているような、そんな不思議な気分にみちるはなった。

 自分と同じ顔をした人がもう一人いる。

 それだけで、なんだかとても不気味な気分になる。

 獣姫は月夜の中を駆け抜ける。

 その獣姫のあとをみちるは追いかける。

 できれば刀を手に入れたい。

 刀のある部屋のそばに行きたいと、みちるは思う。

 でも、そんなみちるの思いを知っているかのように、獣姫は刀のある部屋とは別の方向へと走っていく。

 みちるは獣姫を追いかける。

 しかし、いくら全力で駆け抜けても、獣姫に追いつくことができなかった。(それはまるで自分の影を追いかけているようだった。あるいは獣姫はなにかの妖術を使っているのかもしれない)

 でも、あまりにもみちるのことを甘くみすぎていたのか、油断した獣姫は自分で、鳥の巣の雨に濡れた屋根の上で、滑って転びそうになった。

 しまった、という顔を獣姫はする。

 その獣姫の油断を見逃すほど、天の原みちるは甘くはなかった。

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