40
鬼さん、鬼さん。
こっちにおいで。
にっこりと笑って、口だけを動かしてそんなことを百目の鬼はみちるに言った。
見るといつの間にか、百目の鬼の顔は玉の顔から、今度は別の人の顔に変わっている。
それはみちる自身の顔だった。
まるで小さな鏡を見ているような、そんな不思議な気分にみちるはなった。
自分と同じ顔をした人がもう一人いる。
それだけで、なんだかとても不気味な気分になる。
獣姫は月夜の中を駆け抜ける。
その獣姫のあとをみちるは追いかける。
できれば刀を手に入れたい。
刀のある部屋のそばに行きたいと、みちるは思う。
でも、そんなみちるの思いを知っているかのように、獣姫は刀のある部屋とは別の方向へと走っていく。
みちるは獣姫を追いかける。
しかし、いくら全力で駆け抜けても、獣姫に追いつくことができなかった。(それはまるで自分の影を追いかけているようだった。あるいは獣姫はなにかの妖術を使っているのかもしれない)
でも、あまりにもみちるのことを甘くみすぎていたのか、油断した獣姫は自分で、鳥の巣の雨に濡れた屋根の上で、滑って転びそうになった。
しまった、という顔を獣姫はする。
その獣姫の油断を見逃すほど、天の原みちるは甘くはなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます