39 空っぽの木の鳥籠 空にはなにもありませんよ。

 空っぽの木の鳥籠


 空にはなにもありませんよ。


「これ、みちるにあげるよ。よかったら使って」

 そう言って、玉はみちるに大きな手作りの木の鳥籠を手渡してくれた。

「これ、玉ちゃんが作ったの?」

 その立派な(きちんとした売り物としても、贈り物としても、十分通用するような)木の鳥籠を抱えながら、玉を見てみちるは言う。

「もちろん。私の手作りだよ」

 ふふっと笑いながら、自信満々の顔をして玉はいう。

「暇だったから作ってみたんだけど、……みちる。本当に、いる?」と今度は少し自信のない顔をして玉はいう。

 今日は、みちるの十歳の誕生日だった。(玉はどうやら少し前にみちるが鳥籠が欲しい、と話したことを覚えてくれていたようだった)

「……うん。ありがとう。すごく嬉しい」と珍しく本当に嬉しそうな顔をしてみちるは言った。

 二人は今、みちるの実家である天の原神社の境内の中にある本殿の石造の階段のところに二人で仲良く並んで座っていた。

 みちるは嬉しそうな顔をして、玉ちゃんからもらった大きな木の鳥籠をぎゅっとその胸のところに置いて抱き締めている。

 その空っぽの木の鳥籠からは、削りたてのとてもいい木の匂いがした。

 その鳥籠はみちるの宝物になった。

 今も空っぽのままの鳥籠は、みちるの部屋の中に大切にしまっておいてあった。

 空っぽのままの鳥籠。

 その鳥籠の中に鳥を捕まえておくことを、みちるは今のところ、全然するつもりはなかった。

 玉の顔になった獣姫の顔を見て、そんなことをみちるは思い出していた。

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