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そのみちるの動きに合わせるようにして、百目の鬼はずっと立ち止まっていた縁側の廊下の上を(みちるから逃げるようにして)にっこりと笑いながら、前を向いてとても速い速度で音もなく走り出した。
早い。まるで本物の風のような速さだ。
百目の獣姫の走る速さに驚いて、みちるは思う。
みちるは獣姫のあとを追いかける。
百目の獣姫は縁側の廊下をけって、そのまま柱を足場として、鳥の巣の屋根の上に移動をする。
みちるも百目の獣姫と同じ動きをして、そのまま、縁側の廊下をけり、柱を足場として、鳥の巣の屋根の上に移動をして獣姫を追いかける。
獣姫は屋根の上でぼんやりと夜空に浮かんでいる丸い月の姿を見つめていた。
みちるが屋根の上にまでのぼってくると、百目の獣姫はそんなみちるの姿を見て、やっぱりさっきと同じように妖艶な笑みでにっこりと笑った。
それから獣姫は月明かりの中で楽しそうにその小さな体を動かして、みちるのことを挑発する。
それはまるでその年頃の小さな子供が大人相手に遊んでもらっているような、そんな無邪気な行動だった。
いや、実際に百目の鬼はみちるを相手にして、ただ遊んでいるだけなのかもしれない。
でも、みちるはそうはいかない。
みちるは遊んでいるわけではない。
みちるは百目の鬼を退治するために、(白藤の宮を百目の鬼から守るために)自分の命をかけてここにいる。
みちるは真剣な眼差しをして百目の獣姫のことを見つめる。
今、みちるの目に見える百目の獣姫の顔は、月明かりの下で、みちるの友達である玉の顔そっくりの姿形をしていた。
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