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「お布団の用意、できでいますよ。そんなところで寝ていると風邪を引いてしまいますから、早くこっちにいらっしゃい」

 と、くすくすと闇の中で笑いながら、白藤の宮はみちるに言った。

「……はい。わかりました。白藤の宮」

 まだ少し寝起きでぼんやりとしているみちるは、そう言って、ゆっくりとその体を動かすと、闇の中で手招きをしている白藤の宮のところまで音もなく歩いて移動をする。

 白藤の宮のすぐ隣までくると、白藤の宮はそっと(にっこりと笑いながら)みちるの手を取った。

「さあ、いきましょう」と白藤の宮はいう。

「……はい」

 とみちるは白藤の宮を見ながらそう言った。


 それから二人は鳥の巣の中にある奥の間と呼ばれる部屋に移動をする。そこには薄暗い闇の中に白い布団がふたつ、並んで畳の上に置いてあった。

 白藤の宮が用意をしてくれた、白藤の宮とみちるのための布団だ。

 白藤の宮は自分の布団に、みちるはその隣にあるみちるのための布団の中にゆっくりと潜り込むようにして、入っていった。

「おやすみなさい、みちる」と白藤の宮はいう。

「はい。おやすみなさい。白藤の宮」とみちるはいう。

 それから二人は眠りについた。

 白藤の宮はそれから、あっという間に深い眠りの中に落ちていった。だけどみちるは反対に、なかなか眠りにつくことができなかった。

 目を閉じているみちるの耳に、すーすー、という気持ちのいい白藤の宮の寝息の音が聞こえている。

 鳥の巣の真っ暗な庭からは虫の鳴く声が聞こえている。(……夏の夜だ、とみちるは思った)

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