26 洞窟

 洞窟


 初めまして。こんにちは。(私がそう言うと、君は本当に嬉しそうな顔をして、にっこりと笑った)


 あなたが死んで、私が生まれた。


 静かな森の中に突然の雨が降り出した。

 川辺で少し旅の疲れを癒していた刀鍛冶の少年、蕨は降り出した雨を見上げて、それからすぐに再び見知らぬ森の中を歩くことを始めた。

 降り出した雨はすぐに土砂降りの雨になった。

(すぐ先の視界も見えなくなるくらいのとても激しい雨だった)

 やがてごろごろ、と言う雷の鳴る音が遠くのほうから聞こえた。蕨はどこかでこの激しい雨から身を守ることができないかな? と思いながら、全身びしょ濡れになって、滝のような雨の中を小走りで駆けていた。


 すると、少し先の森の中の風景の中に、岩肌が露出している崖のようになっている場所に、身を隠すことのできるくらいの大きさのある洞窟があるのを蕨は見つけた。

 その洞窟を見つけた蕨は、とりあえずこの激しい雨が止むまでの間、その洞窟の中で身を休めることにした。

 蕨が洞窟の中に入ると、ぴかっという音がして、一瞬だけ、空が激しい光に包まれた。

 それは雷の光だった。

 それからすぐにごろごろ、と言うさっきとは比べ物にならないくらいのものすごい音がして、蕨は思わずその小さな体をびくっと震わせた。

 どうやらすぐ近くの場所に雷が落ちたようだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る