23 お風呂

 お風呂


「一緒に入りますか?」

 にやにやしながら白藤の宮はみちるにいう。

「一人で入ります」

 小さく笑ってみちるはいう。

「じゃあ、先にお風呂入っていいですよ。私はあなたのあとでいいです」とちょっとだけ不貞腐れた顔をして白藤の宮はみちるに言った。

「ありがとうございます。じゃあ、先にお風呂。いただきますね」そう言って、みちるは白藤の宮の前をあとにした。

 みちると白藤の宮はお食事の後片付けを二人でして、それからまたはじめの部屋でお茶を飲んで、少しの間、夏の夜の蒸し暑さを楽しんだあとで、そんな会話をする。

 みちるは鳥の巣にあるとても綺麗なお風呂場に移動をする。

 鳥の巣のお風呂場は鳥の巣とは別の小さな小屋のような場所にあった。

 鳥の巣の裏口から出て、(いつくか置いてある草鞋を貸してもらった)短い曲がりくねった石の道を歩いてすぐのところにそのお風呂場はあった。

 お風呂場には事前に白藤の宮がろうそくの火をつけてくれていたようで、明るい炎の光が灯っていた。

 お風呂場の中に入ると、みちるは脱衣場でその着物を脱ぎ始める。

 みちるの真っ白な肌がろうそくの炎の中に露わになった。

 裸になるのは、森の途中にある川で水浴びをして以来だ。そんなことをみちるは思う。

 みちるはずっと頭の後ろで結んでいた髪をほどいて、久しぶりに自分の長い黒髪を自由にした。

 その長くて美しい黒髪はみちるの背中の辺りまで伸びている。

 その髪を櫛でもう一度頭の上で結ってから、みちるは脱衣場から、白い湯気のこもっている、鳥の巣の桐で作られているお風呂場の中に入っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る