22
涙で滲んだ視界のまま、みちるが顔をそっと上げると、そこには竹串にさした桃をみちるに向かって差し出してくれている白藤の宮がいた。
「さあ、みちる。桃をお食べ。甘くて、すごく美味しいですよ」
ふふっと笑って白藤の宮はいう。
「……はい。いただきます」
涙目のままで、小さく笑うと、みちるはそのまま顔を動かして白藤の宮が差し出してくれている一口の大きさに切った桃を食べた。
「美味しい」
にっこりと笑ってみちるはいう。
それは本当に美味しい桃だった。
冷たくって、甘くって、優しくって、……本当に美味しかった。
「よかった。まだたくさんあるから、もっといっぱい食べてもいいですよ。いくらでもおかわりを用意してあげます」
嬉しそうな顔をして白藤の宮はいう。
「ありがとうございます」
涙を自分の指先でそっと拭いながら、みちるは笑ってそう言った。
笑顔になったみちるを見て安心したのか、乗り出していた体を引っ込めて元の姿勢に戻ってから、白藤の宮はもう一つの(自分のための)竹串を手に取ると、それを桃に刺してゆっくりと上品な仕草で自分の口の中に運んだ。
「うん。美味しい」
みちるを見て、頬を大きくしたままの白藤の宮はそういった。
それから二人は桃をすぐに食べ切った。(桃は二つ分切ってあった)
それからみちるは白藤の宮の言葉に甘えて、桃を一つ、おかわりしてちゃんと綺麗に食べ切った。
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