18 夏の宮
夏の宮
みちるが障子を開けたことで、薄暗い部屋の中は少しだけ明るくなった。
みちるはさっきと同じようになるべく足音を立てないようにゆっくりと歩いて自分の席まで戻ると、静かに座布団の上に座った。
それからみちるは一度、白藤の宮の顔を見て、小さく笑ってから、箸を持ち(みちるの端は飾り気のない竹を加工した箸だった)ご飯を食べ始めた。
「美味しい」
にっこりと笑ってみちるは言った。(それはみちるの本心だった。白藤の宮の住んでいる鳥の巣で食べるお食事は、いつも、いつも本当においしかった)
「それはよかった」
と、いつものように笑って白藤の宮はみちるに言った。
それから少しの間、二人は無言のまま、お食事を続けた。
でも、しばらくしてから白藤の宮がふとなにかを思い出したかのようにみちるの顔を見て、「そういえば、夏の宮は今、どうしていますか? すくすくと育っていますか?」とそんな珍しい話題をみちるに言った。
みちるは夏の宮の姫のお話が白藤の宮から急に出てきたので、(内心)とても驚いたのだけど、それをなんとか顔に出さないようにしながら、「はい。とても元気に、わんぱくに、すくすくと育っていますよ」と白藤の宮にそう言った。
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