鳥の巣（旧）

１６

　鳥の巣の近くの森には竹がたくさん生えている竹林があった。

　その竹の一つを切って加工したのだろう。

　炊き上がった土鍋のご飯を盛り付ける器は斜めに切った竹の器だった。（いつも鳥の巣で白藤の宮が作ってくれたお食事をいただくときには、毎回斜めに切った竹の器にご飯を盛り付けていた）

　いつものように戸棚の中から白藤の宮がその竹の器を取り出すと、そっと新鮮な竹のいい匂いがした。（もしかしたら、毎回、みちるが森を尋ねるころになると、白藤の宮がわざわざ新しい竹の器を作ってくれているのかもしれないとその匂いを嗅いでみちるは思った）

「はい。できました」

　そう言って、にっこりと笑いながら両手を合わせて白藤の宮は言った。

　今日のお食事の献立は竹に盛り付けた土鍋で炊いた炊き立てのご飯と、新鮮な橙色の鯛のお刺身、そして森の野菜のお味噌汁だった。（とても豪華な献立だとみちるは思った）

　二人は出来立てのお食事をはじめに二人でお話をしていた部屋の奥にある、ものがなにも置いていない、虫の抜け殻のような寂しい雰囲気のある、もう一つの部屋の中に運んで、そこでいつものように二人で向かい合うようにして座った。

　部屋の障子は閉めっぱなしで外の風景は見えない。

　……薄暗い部屋。

　そのなんの飾り気のない部屋が、いつも二人が二人だけでお食事をする部屋だった。

　いつもはこの部屋で、一人で白藤の宮は食事をしているのだという。

　そんな一人で食事をしているいつも明るい笑顔の白藤の宮のことを想像して、いつもみちるはそれはとても寂しい風景だと思った。

「では、いただきます」と手作りのお箸（桜の花の飾りのあるお箸だった）を持って両手を合わせている白藤の宮はみちるを見ながらそう言った。