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 綺麗な橙色をした鯛は白藤の宮がとても綺麗に捌いてくれた。

(密かに料理の練習をしていたみちるだったけど、流石にまだ鯛を綺麗に捌くことができなかった)

「これ、とっておきの器なんですよ。でも今日は特別な日だから使っちゃいますね」と言って、白藤の宮はこそこそと台所の奥に隠してあったとても綺麗な真っ白な器を持って、とても楽しそうに笑いながらみちるに言った。

 その器は確かにとても美しい、とても素晴らしい器だった。(きっととても希少で、高価な器なのだろう)

 その器には一輪の花の絵が描かれていた。

 薄紫色の花。

 最初、その花が白藤の宮の名前の由来になった藤の花かと思ったのだけど、どうやらよく見ると、それは桔梗の花であるように思えた。

 白藤の宮はその桔梗の花の絵が描かれている真っ白な器の上に(大きな森の木々の葉のような形をしていた)綺麗に切った鯛のお刺身を盛り付けていった。

 みちるはその間、そんな白藤の宮の料理の技術を横目にそっと盗み見ながら、土鍋の中のご飯の様子を確かめながら、自分が作っているお味噌汁の中にそっと、秘伝の味噌を入れて、ゆっくりとお湯の中に溶かしていった。

「いい匂い」

 そのお味噌汁の匂いを嗅いで、にっこりと笑って白藤の宮はそう言った。

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