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 もしも立場が逆だったら、さっき驚かせたことの仕返しにこちらも驚き返してやろう、と白藤の宮は思ったと思うけど、みちるにはそんな気持ちは全然ないように思えた。

 みちるはとても真剣な、真っ直ぐで透明な目をして、てきぱきとただ、目の前にある食材の調理に集中している。

 鳥の巣の小さな台所には、とんとんとん、という気持ちのいいみちるが握っている小さな包丁の野菜をきる音だけが響いている。

 そんなみちるの姿を白藤の宮はただじっと(驚いた顔をして)見つめていた。

 ただ調理にだけ集中をしているみちるはそんな白藤の宮には気がつかずに、鳥の巣の裏にある畑で取れた(白藤の宮の暇つぶしは野菜作りだった)新鮮な野菜を同じ大きさに切り、それをあらかじめ桶の中に汲んであった森の水を入れた土鍋の中に入れていく。

 新しい薪を入れて、藁を持ち、火打ち石を打って火をつける。

 種火を竈門の中に入れて、竹筒を吹いて火を大きくする。

 団扇をあおいで火をさらに強くする。 

 土鍋を竈門の上に置いて、野菜を温める。

 みちるのそんな動きを見ながら、白藤の宮はお米を水でといでいる。

 みちるの動きは、まるで自分(白藤の宮)そっくりだった。

 もう一人の私がそこで今、私の代わりにお食事の支度をしてくれているようだと思った。

 白藤の宮はお米を炊くための土鍋(鶴の絵が描いている土鍋だった)に研いだ白いお米と森の水を入れる。

 そこでようやくみちるはふと我にかえったように、そっと隣にいる白藤の宮の顔を見た。

 そのころにはにはいつもは隙だらけに見えても、本当は隙なんてあんまりない白藤の宮の顔はいつもの顔に戻っていた。

「? どうかしましたか? 白藤の宮」

 自分を見ている白藤の宮を見て、みちるがいう。

「いいえ。別になにも」

 にっこりと笑って、手の動きを止めないままで、白藤の宮はそういった。

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