6
「はい」
とみちるは言って正座をして座っていた足を崩すと、紺色の座布団の上から、とてもいい匂いのする畳の上に立ち上がって、それからゆっくりと囲炉裏の周囲を回るようにして、自分の正面にいる白藤の宮のところまで移動をした。
ぱちぱちと、火の弾ける音が聞こえた。
白藤の宮はみちるのそんな動きに合わせて、やっぱりずっと、その大きな黒い美しい瞳で、みちるのことを見続けていた。
みちるが白藤の宮のところまでやってくると、白藤の宮はぽんぽんと自分の綺麗な太もものところを白い着物の上から小さく二回だけ叩いた。
「ここに頭を乗せなさい。膝枕をしてあげます」
と、にっこりと笑って白藤の宮はみちるに言った。
あなたは大人になりましたね、とさっき言われたばかりなのに、と思いながらも、みちるはそんな白藤の宮の言葉に「……はい」と恥ずかしそうな声で言った。
それからみちるは白藤の宮の柔らかい太ももの上に自分の頭をそっとできるだけゆっくりと、優しくのせた。(まるで生まれたてのたまごを割らないように気をつけて置くように)
みちるの視界にはぱちぱちと小さな音を立てる小さな火があった。
少し橙色をした赤い小さな炎。
「……あったかい」とみちるは言った。
みちるの感じている温かさは囲炉裏の小さな火の温かさだけではなかった。
白藤の宮は黙ったまま、そっとみちるの黒い髪を撫でてくれた。
ただそれだけで、みちるのぽっかりと穴が空いたような、空洞のような心は満たされる。
みちるはなんだかとても優しい気持ちになった。
それからみちるは、……私はやっぱり、まだまだ子供だ、と本当に心のそこから、そう思った。
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