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「なにか私の顔についていますか」
にっこりと笑ってみちるは言った。
「いいえ。別になにも」
みちると同じようににっこりと笑って白藤の宮がそういった。
「では、なんでずっと私の顔を見て笑っているのですか?」みちるはいう。
「あなたがずいぶんと大きくなったな、と思って」とふふっと笑いながら白藤の宮はそういった。
その白藤の宮の言葉を聞いて、みちるはその真っ白な雪のような頬をほんのりと赤い色で染めた。
「大人になりましたね。みちる」
と白藤の宮は言った。
「私は、全然大人になっていません。まだまだ半人前の子供のままです」とみちるは自分の本心を白藤の宮に言った。
「そんなことはありません。あなたはもう十分に大人ですよ。みちる」とにっこりと笑って白藤の宮はみちるに言った。
自分の(密かに)憧れている女性である白藤の宮からそい言われて、みちるはまた、その頬を赤く染める。
みちるは照れ隠しのために、そっと横を向いて開いた襖の向こう側に広がっている鳥の巣の美しい庭を見つめた。
そこには長年、この家に住み続けている白藤の宮が丁寧に手入れをし続けている小さな庭があった。
その小さくて、でも、とても美しい庭が、みちるは大好きだった。
緑色の植物の上を小さな一匹の蝶が飛んでいた。
白い色をした綺麗な蝶々。
その蝶は蜜を吸うために、一輪の花を探しているようだったけど、残念なことに白藤の宮の手入れをしている鳥の巣の庭には花は一輪もまだ、咲いてはいなかった。
「みちる」
と、白藤の宮が美しい声でそう言った。
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