123 私と愛しい人
その日の夜。シロが眠っている私の枕元にやってきた。
「シズヤ、お別れだ。お前を我の嫁にしたかったが……。役目を果たすために森に戻らねばならない。黒い方に力を持っていかれた所為で我は無力だが、黒い方が消えた今、我が森を管理しなければならない。力は失っても、形だけでも、我はあそこにいなければならない……。お別れだ……。シズ、頼みがある。まだ森は完全に浄化されていない。だから、力を貸して欲しい。お前の作るキュアポーションを定期的に森にかけて欲しい。そうすれば、そのうち森は完全に浄化されて元の美しい森に戻る……。今までありがとう。シズ、幸せになってくれ、我の愛しい子よ」
そう言って、煙のように消えてしまった。
シロの話によると、私のバグった全能力を譲渡されたヴェインさんの渾身のパンチで、瘴気に蝕まれていた黒い方のシロは消滅したらしいのだ。
森の管理者として、力は失ったけど、森にいないといけないといって、シロは消えてしまった。
私は、シロとの約束を守るために、これからもキュアポーションを作って、森を清めに行くからね。
こうして一連の事件は、魔の森の浄化をすることで終わったのだ。
そして、私はゴリラスキルとそれに伴うバグった能力値を全て無くしていた。
他のスキルは普通に使えるので全然問題なかったけど。
ヴェインさんも、浄化パンチをした時に譲渡された力の殆どを使ったみたいで、前より力が強くなった程度で、大きな変化はなかったそうだ。
そうそう、結局私は、あの出来事のあった次の日に本当にヴェインさんのお嫁さんになっていた。
先に籍を入れて、結婚式は後日行うことになったけどね。
街のみんなが私とヴェインさんをお祝いしてくれたことがすごく嬉しかった。
私とヴェインさんが結婚した日、アーくんは、家を出てしまったことが残念だったけど、なんと空き家だった隣の家を購入して野上君とかっちゃんの三人で暮らし始めたことにはびっくりしたっけ。
だから、夜ご飯は大抵いつもみんなで囲んでいた。
それと、私の髪は真っ白になっちゃったけど、そんな髪も綺麗だってヴェインさんが言ってくれたから、私の髪は黒に染めずに真っ白なままになっていた。
魔の森の浄化も、数年かかってしまったけど、無事に終わっていた。
私はと言うと、今はヴェインさんと彼との間に生まれた可愛い双子の兄弟の四人で暮らしている。
長男はヴェインさんにとてもよく似ていたわ。だけど、甘えん坊さんで、大きくなっても私と結婚するって言って、本当に可愛いの。
次男もヴェインさんに似ていたけど、性格は私にもヴェインさんにも似ずに、どちらかと言うとアーくんに近かったかもしれない。
口は悪いけど、優しくて、意地っ張りだけど、甘えん坊で、だけど、家族思いのいい子なの。
ヴェインさんは、今も騎士団の補佐官として働いている。
私は、二人の子供が大きくなったらまた、お店を開こうと考えている。
ヴェインさんに相談したら、協力してくれるって言ってくれた。
なんのお店を開こうか、今からとても楽しみ。
だけど、それはまだまだ先になりそう。
だって、もう一人子供を授かったって今日分かったから。
最近調子が悪くて、ポーションを飲んでも良くならなくて、お医者さんに診てもらいに行ったの。
そしたら、おめでたですって。
うふふ。
ヴェインさんがお仕事から帰ってきたらすぐに言って、驚かせようかと思ったけど、早くこの喜びを伝えたくて、私は双子の兄弟と手を繋いでヴェインさんの元の向かっていた。
きっと、驚いた後に私を抱きしめて喜んでくれるはず。
はぁ、早くこのことを伝えたい。
最初は異世界に召喚されて、森に捨てられて大変な思いもしたし、千歌子ちゃんに裏切られたりもしたけど、私はここに来られてよかったと思ってる。
だって、最愛の人と出会えて、その人と結ばれて、こんなに幸せなことってないわ。
ありがとう、ヴェインさん。私と出会ってくれて。
私を愛してくれて。
私と家族になってくれて、ありがとう。
ヴェインさん、大好き。世界一愛してます。
『異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。』 おわり
異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。 バナナマヨネーズ @BananaMayonezu
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