122 私は見てしまった……

 突然口に入ってきた、苦くて辛くて痛い何かを私は盛大に吐き出していた。

 少しだけ喉を通ったそれの所為で、胃の中の物が逆流していった。

 

 そして、気が付くとヴェインさんにお風呂で体と髪を丁寧に洗われて、体を拭かれて、下着と服を着せつけられていた。

 

 混乱しフリーズしている私の脳裏には、今までのことが蘇ってきていた。

 ボンヤリとする意識の中で、ヴェインさんにお世話をされた日々をだ。

 

 私は、声にならない悲鳴を上げて、タオルを腰に巻いただけの姿のヴェインさんにお姫様抱っこされてリビングに戻っていた。

 

 きっと真っ赤な顔になっていたと思う。

 私はあまりの恥ずかしさに両手で顔を覆って身を固くしていた。

 そんな私の耳に、かっちゃんの怒鳴り声が聞こえてきた。

 

「おい!なんで裸で出てくる!!」


「いや、着替えを忘れた」


「ちょっと待て……。まさか……、お前!!!!」


「えっ?あ……、ああああーーーー!!悪い、シズ、いつもの癖で!!」


「ちょっと待て、いつもの癖ってなんだ!!」


「すまない。シズ、決していやらしい気持ちなどなく」


「おい、いやらしいってんだ!!ヴェイン、俺の質問に答えろ!!」


「シズ?怒ってるか?」


 耳元でそう言われてしまった私は、色々複雑だった。

 裸を見られてしまったことは恥ずかしい。

 でも、私の裸を見ても何も感じないといわれたみたいで、こ、こ、恋人として……、魅力ないみたいで悲しくなっていた。

 

 だから、口が滑ったともいう。

 

「ヴェインさんのえっち……。責任、取ってください……」


 ついそんなことを言ってしまったのだ。

 重い女って思われたかもしれないと、ちょっと焦ってしまったけど、大丈夫だったみたい。

 ヴェインは、嬉しそうな表情で私のこと、ぎゅっと抱きしめてくれたの。

 

「ああ、シズ。今すぐ結婚しよう!!愛してる!!」


 えっ?今すぐ?まさかそんな答えが返ってくるとは思っていなかった私は、慌ててヴェインさんの腕の中から抜け出していた。

 

「ヴェインさんのお嫁さんになれるのは嬉しいですけど、こんな遅い時間では婚姻届け出せないから無理です。明日にしましょう?」


「ああ、明日朝一で結婚しよう」


「はい!」


 私がそう言ってヴェインさんに抱き着こうとしたとき、ヴェインさんの腰に巻き付けていたタオルがハラリと落ちてしまったのだ。

 

 私は、見てしまった……。

 ヴェインさんの……全裸を……。

 

 私はあまりのことに、涙目でヴェインさんを見上げていた。

 小さい頃に見た、かっちゃんの可愛いものとは大違いのグロイ物がそこにあったのだ。

 

 私は、私は……。

 逃げ出していた。

 

「やっぱり、結婚はまだ早いみたいです!!」


 そう言い残して自分の部屋に飛び込んでいた。

 

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