116 私はとんでもない事実を知ってしまった
私を後ろから抱きしめている真っ白な男の人は、とんでもないことを言い出したのだ。
「我は、この森の主だった者だ。シズヤが我の元に現れたことで、ただ終焉に向かっていた我は救われた。でも、森の修復が不完全なまま、シズヤは、我の元を去ってしまった。気が付いた時には、我は二つの存在になっていた。ここにいる我は、シズヤを追って森を出た。残ったもう一人の我は……、不完全に修復された森を穢した……」
突然の発言に私は、目を白黒させていた。
事前に何らかの説明をされていたのか、かっちゃんと野上君は平然とした顔をしていた。
でも、かっちゃんは、ちょっとイラついたような表情で、頭をかいた後に不機嫌そうに言った。
「駄犬、そこんところも大事だが、お前のいやらしい正体を静弥にさっさと吐いて、嫌われろ。このエロ犬」
「まぁまぁ、カツの言いたいことは分かるけど……。知らない方がいいこともあると思うんだけど……」
「あ˝?」
「はぁ。静弥ちゃん、冷静に聞いてね……。目の前の白髪のイケメン……。シロなんだ……。分裂したときに、力の殆どをもう一人の方に取られちゃったみたいで……。それで、子犬の振りをしていたんだって」
「え?シロが?シロは小さくてかわいい子犬だよ?シロは子犬だよ?」
混乱している私に、目の前移動していた白い男の人は、にこやかに笑いかけて、「わん」って言った後に、白い煙に包まれていた。
白い煙が晴れたその場所には、私のよく知る子犬のシロが可愛らしくお座りしていた。
だけど、シロが「わん」って、鳴いたらまた白い煙が広がって、煙が晴れた場所には、ケモ耳と尻尾を生やした白い男の人が……。
それを目にした私は、徐々にその事実を受け入れ……、られる訳ないでしょうが!!
私は、その事実がゆっくりと脳内に浸透した後に悲鳴を上げていた。
「い、いやーーーーーーー!!」
悲鳴を上げた後に、自分の体を抱きしめるようにして蹲って、自然と涙目になっていた瞳で人型になったシロを見上げていた。
だって、私……、何も知らなくて……。何回もこの人とお風呂に入ったり一緒に寝たりしたことを思い出して、恥ずかしさで死にそうだった。
そんな私の羞恥心を知ってか知らずか、シロは困ったような表情でとんでもないことを言ったのだ。
「シズヤ?なんでそんなに怯えてるんだ?シズヤは我の嫁なのだから、一緒に風呂に入るのも、褥を共にするのも当然だろう?それに、正式に嫁になった後は、初夜を迎えて―――」
「このエロ犬が!!死ね!死に晒せ!!」
シロがとんでもないことをつらつらと言っている途中で、耐えきらなくなったと言わんばかりにかっちゃんが、怒鳴りながらシロを全力でどついていた。
シロは抵抗しようとしていたけど、何故か野上君に背後から拘束されていて、かっちゃんにぼこぼこに殴られてしまっていた。
私は、遅れてその惨状に悲鳴を上げてかっちゃんを止めに入っていた。
「かっちゃん、ダメ。そんなに殴ったらだめだよ!!」
「は?なんでこいつを庇うんだよ!!このエロ犬は、死んで当然だ!!」
「待って、シロを殴るのはやめて欲しいけど、それよりもかっちゃんの手が!!」
そう言って、半泣きでかっちゃんの腕に抱き着いていた私の言葉を聞いたかっちゃんは、唖然としたように言ったのだ。
「は?俺の怪我の方がっ心配だったのか?」
そんなに驚かれるとは思っていなかった私は、ちょっとだけ頬を膨らませながら言っていた。
「当たり前でしょう!かっちゃんは、大事な幼馴染なんだから!!それよりも怪我を見せて、ポーションで―――」
私がそこまで言うと、かっちゃんは、顔を片手で覆って空を見上げて何かを言っていたけど、私にはかっちゃんがなんて言ったのか聞き取ることが出来なかった。
「はぁ……。降参だ。静弥のこと、世界一愛してるけど、お前の心はヴェインだけ見てるって、お前の無理はいつものことだけど、ヴェインが原動力になってるって、分からされたよ……。はぁ、悪いな……。お前をこれからも愛し続けることだけは許してくれ……」
「かっちゃん?」
「なんでもない。怪我は、ソウに見てもらった。幸い利き手じゃなかったから、何の支障もない。心配かけて悪かったな」
そう言って、私の頭を緩く撫でてくれたけど、私はかっちゃんの少し寂しそうな表情が気になった。だけど、何も言えなかった。
だって、かっちゃんの目が、何も聞かないでくれって言ってるみたいだったから。
「あのぅ。我の話……、聴いて欲しい……、無視は悲しい……」
「よしよし。でもな、今はあの二人のこと放っておいて欲しいかな?」
「おい、メガネ。貴様に指図される云われは……」
「ん?」
「ちょ……。メガネ?目が全く笑っていないようだが……」
「ん?」
「はい。黙ります……。我……、本当はすごい神様なのに……」
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