異世界に召喚されたけど、従姉妹に嵌められて即森に捨てられました。

104 私はヴェインさんに会いたくなった

　ヴェインさんとのキスを思い出してひとり、百面相をしていた私にエレナさんが言ったのだ。

「で、シーにゃんはヴェインのやつとどこまで行ったの？あいつ、あれでヘタレなところがあるから、あたし少し心配なのよねぇ。もし、ヴェインのやつがグダグダしてるようなら、シーにゃんからヴェインを誘っちゃいなさいよ！！」

　そう言って、口元をニヨニヨと歪めて楽しそうに私の反応を見ていた。

　何も反応できずにいると、キャシーさんが言ったのだ。

「う～ん。それは最終手段として、私は待ってもいいと思いますよ？ほら、両思いになるまでの道のりを考えると、シズヤさんを大切にしたいと思うのは当然ですし。それで、中々手を出せずにいても、それは補佐官なりの優しさと言うか……」

「は？あたしだったら、好きな子と両思いになったら直ぐに寝るけど？あいつ、ヘタレすぎじゃないか？」

「あんたが特殊なのよ！！」

「組合長がおかしいんです！！」

　気がつくと、三人はスーナさんのことを責め始めていた。

　どうしたらいいのか分からずにいると、スーナさんが追加で頼んだ飲み物と料理がテーブルに届いていたことに気がついた。

　私は、三人の話に入って行けず……、というか次第に何を言ってるのか理解できなくなってきていて、ただ運ばれてくる料理と飲物を口にすることに専念していた。

　そんな訳で、半分以上キャシーさんたちの話を聞いていなかった私に、突然エレナさんが話を振ってきた事に驚いてしまった。

「シーにゃんもそう思うわよね？」

「はい？」

　突然のことに、聞き返したつもりだったけど、何故か肯定したと取られてしまっていた。

「ほぉらね！！だったら、決行は今日よ！」

「意外でした。シズヤさんが……。でも、ありだと思います」

「ふむ。ちょっと侵入してのぞき―――」

「だめよ！！」

「駄目ですからね！！」

　なんだか三人ともとても盛り上がっていた。

　そして、なんだか三人とも酔っているような？

　もしかして、追加で届いたドリンクってお酒だったのかな？

　でも、三人ともジュースを飲むみたいにグビグビ飲んでたし……。

　でも、完全に出来上がってるように見えるんだけど……。

　そんなことを考えていると、スーナさんにガシッと肩を掴まれて揺さぶられていた。

「シーにゃん、シーにゃん！！お願いだから、ちょっとだけ予行練習しないか？ほら、あたしをヴェインだと思って、その可愛らしい唇で「私を抱いて、あなたのものにしてください」って言ってみて！！」

　はい？えっ？何の話？

　私が、突然のスーナさんの謎のおねだりに首を傾げていると、エレナさんが唇を突き出して言ったのだ。

「だめよぉ。そこは、「お願い。私を大人にしてください」って言って、こう、舌を絡めるようにキス―――」

「駄目です！！そこは、「ヴェインさんになら、何をされてもいいです……。優しくしてください」一択です！！」

　そう言って、キャシーさんは、頬に手を当てていやんいやんという仕草をしたのだ。

　三人の話に全くついていけなかった私は、話を聞いていなかったことを悔やみながら三人に聞いたのだ。

「あの……、ごめんなさい。途中から話についていけなくて、全然話を聞いてませんでした……。えっと、三人は何を言っているんですか？」

　私が、申し訳ないと言った気持ちを込めてそう言うと、三人はちょっと鼻息を荒くしながら、私に詰め寄って言ったのだ。

「「「シーにゃん（シズヤさん）が、ヴェイン（補佐官）に大人にしてもらう話よ（です）！！！」」」

　はい？大人にしてもらう話？

　それは一体……。

　私がそんなことを考えていると、エレナさんが言ったのだ。

「さっきシーにゃんも、そうだって言ったでしょ？あたしが、ヴェインからムモモ貰ったんだから、結婚前でも好きならエッチしちゃえばって言ったら、はいって言ったじゃないのよ」

「えっ？えーーーーーーー！！私、そんな……、えっ？えーーーーーーー！！ち、違います。違いますから！！あれは、肯定ではなくて、疑問系でしたよね？そうでした！！」

　つまり、話の過程は分からないけど、ヴェインさんとエッ……、をしたいって私が言ったみたいになっていることに一気に顔が熱くなった。

　あまりの熱さに、喉がひりつき、声が出なかった。

　誤解を解きたいのに、カラカラの喉からは掠れた音しか出ず、私はそれを解消するために、テーブルの上のドリンクを一気に飲んだのだ。

「えっ？シーにゃん、それあたしのお酒……」

　慌てるエレナさんの声が聞こえた気がしたけど、その時の私には何も考えることができない状態になっていた。

「ひっく。わたひは、えっちなことがしたいんじゃないんれす。わたひは、ゔぇいんしゃんとちゅーがしたいんれす！！もっと、いっぱいちゅーしたいれす！！ゔぇいんしゃん、だいしゅきれす。ふぁぁ、なんらかあついれすね」

「駄目です！！ごめんなさい！！私達がいけなかったんです！！ごめんなさい！！駄目です。シズヤさんここで服を脱いでは駄目です！！」

「シーにゃん、駄目よ。ここでそれ以上は！！これ以上はあたしたちがヴェインに殺されるわ！！」

「うはぁ。半脱ぎ最高。じゅる。シーにゃん、着痩せするタイプなのね。大きいと思ったたけど、更に大きい。はぁはぁ」

「組合長！！不味いですから！！ステイ！！」

　何やら、周りが騒がしくなっていた気がするけど、それよりも私はヴェインさんに今すぐ会いたくなっていた。

「かえりゅましゅ。ゔぇいんしゃんにあいたいれすのれ、ひっく、かえりゅましゅ。みにゃしゃん。さようにゃら」

　私は、ふわふわした気持ちで、ヴェインさんの笑顔を思い浮かべて口元を緩めながら、ヴェインさんに会いに歩き出したのだった。