17
ルイ達に強烈な風を叩きつけて飛ばした奏は、全速力で家に駆け戻った。中に飛び込み、丁度散歩から帰ってきたであろうカイルに、思いっきり抱きついた。
『ぐえっ!』
カイルが変な声が聞こえた気がしたが、今の奏にはそんなことには構っていられる余裕はなかった。奏はそのままカイルを揺さぶった。
「カイルどうしようこの格好ルイに見られた! きっと王都に連れていかれちゃうんだー! どうしようどうしよう。証拠隠滅のためにあいつらを消す? それともこの際町ごと消したほうがいいのかな。いやそれよりも・・・・・・。」
『ウグ! カナデ・・・カナデ。聞く。・・・・話を聞くからいったん我を話して落ち着け!!!!』
「え? あっ、カイル。ごめん・・・・・・・。」
カイルの苦し気な叫びに、奏はやっと自分がカイルの首を思いっきり絞めていたことに気がついた。慌てて腕を放すと、カイルはふらふらと壁のほうに行きドサッと体を横たえた。
『ぜぇぜぇ。・・・・・死ぬかと思った・・・。それで、ぜぇ・・・何があったのだ? ぜぇ。』
カイルは荒い息を吐いて寝そべったまま奏に尋ねた。考えてみれば、カイルは何も知らないままいきなり奏に首を絞められ揺さぶられ、わけもわからず奏の物騒な独り言を聞いていたことになる。
なんか・・・・・散々な目に会ってるなぁ。
自分がその首を絞めつけていた当事者であることを都合よく忘れているカナデは、そう思った。
「カナデ?」
そんな奏の思考を知ってか知らずか、カインが胡乱な視線を向けてきた。声になぜか少しドスを聞かせている。
「何も! 何も考えてもいないし思ってもいません! カインが散々な目に会ってるなーとかなんて全く思ってません!! ・・・・・あ。」
恐る恐る視線をカインに戻すと、カインはジーっと奏を見ていた。なんだか空気がピリピリしている。
やばっ、墓穴ほった~~~~~~!!!!
カナデは内心頭を抱えた。
ほーそんなことを考えていたのか。
カイルは奏の発言に、八つ当たりのような苛立ちを覚えた。
『散々な目に、であったな。』
カイルの声に冷たさが宿った。奏の体がビクリとはねた。だがカイルはそんなことにはお構いなしに自分の目の前に、魔力の塊を作り出す。
『誰のせいでそんな目にあったと思っているのだ!!!!』
怒りの言葉とともに、魔力の塊を奏にはなった。
ドッカーーーーーン!!!
魔の森に爆発音が響き渡った。
その後カナデは約1時間ほど、カイルにコンコンとお説教を食らったのだった。
『ふむ。なるほど。だからカナデはあんなに気が動転していたのだな。我の首を絞めつけて散々な目に合わせたのも仕方がないことだな。』
「はい、そうです。その節は申し訳ございませんでしたーーー!!」
カイルのお説教がやっと終わり、奏は森でのこと話した。カイルはまだ首を絞められたことに怒っているのか、相槌を打ちながらもちょこちょこ嫌味を言ってきた。当然のごとく奏には反論できない。そのため、カイルからのチクチクする目線や言葉を甘んじて受けていた。
「ねぇカイル、私はそろそろ拠点を変えたほうがいいと思うの。」
私の提案に、カイルは少し考えた。
『確かに。今日はあの小僧の他に人もお主を見られているからな。それに我らはあの町では有名になりすぎた。いいころ合いではあるな。だが我はここ以外あまりよく知らんのだ。』
「じゃあ、これからギルドに行ってミレーナに聞いてみようよ!」
奏たちは、ミレーナに相談すべくギルドに向かった。
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