閑話6(ルイ視点)
空を飛ばされながらルイは、先ほどの光景を思い出していた。
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叔父上の執務室でカインたちと合流した後、ルイ達は奏に会いに4人で魔の森に向かった。今回は前回と違いメンバーが3人増えている。そして全員高ランクの冒険者であるのも幸いしてわりとスムーズに置くへ進むことができた。
中央付近に近づくにつれ、魔物があまり現れなくなった。そこで俺たちは3方向に分かれてあたりの様子を見ることにした。ちなみになぜ3方向なのかというと、カインがローゼと離れるのを嫌がたためである。
茂みをかき分けて進んでいくと、明るい場所に出た。上のほうに人の気配を感じ見上げてみた俺は固まった。そこには、カラスの濡れ場織のような黒髪にすんだ黒い瞳を持った少女が俺を見下ろして固まっていた。
後ろの枝から光が差し、少女を照らしていた。それがとても神秘的に見え、俺は目を離せないでいた。
ドクン!!
胸が高まった。そして自分のものではない記憶が頭の中に浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返していた。俺はなぜかこの記憶は自分のものだと漠然と思えた。それと同時に物心ついた時からたまに見ていた夢や、昨日洞窟で見ていた夢はすべて俺自身であると確信した。
『そなたにはマルティアノを滅ぼしてもらう。』
『無事妾の願いをかなえてくれたようじゃな。礼に、約束通り願いをかなえよう。』
『そなたの願い、叶えよう。見たところお主はあれの魂の伴侶のようだからのう。きっとあれの心を救ってくれるはずじゃ。アノストロ帝国の王ギルバードよ。我が愛し子―――をよろしく頼む。』
夢に見た女の声が気頭の中で響いた。1部はっきりと聞き取れないところもあったが、それは夢の最後の場面だったからだろう。
「君は、神の愛し子か?」
気づけばそう問うていた。疑問風に聞いたが、俺には確信があった。この少女が俺がずっと長い間、会いたいと求めていた存在だと。
少女は答えない。そのまま見つめ合ったまま数時間とも思えるような短い時間はすぐに終わりを告げた。
後ろで茂みが揺れる音がした。少女の視線がそれにつられるように俺の後ろに行き、そのまま固まった。俺は少女の視線が自分から外れたことに少し苛立ちを感じながらわずかに後ろを振り返る。そこには、予想通りカインたちが少女を見上げて固まっていた。おそらく、なかなか集合場所に戻ってこない俺を心配して様子を見に来たのだろう。さて、どうするか・・・・。
おのれの使命を優先させるならば、ここで少女を説得しなくてはならない。しかし、数日前カナデに言われたことを思い出した。フードで表情はわからなかったが、あのいい方はまるで自分がそんな目にあったかのような言い方だった。だが・・・・・・・。
そんなことをぐるぐる考えていると、巨大な魔力の塊がすごい勢いで迫ってきた。慌てて顔を上げた瞬間、突風が俺たち4人を吹き飛ばした。
あの少女はと思い少女がいた枝を見ると、そこに少女の姿はなかった。少女を探す暇もなく、空に飛ばされた。
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「ちょっとルイ! 前見て前! 着地するから、ちゃんと着地してよ!! 失敗しても責任取らないからね!!!」
体をやわらかい風が包むのを感じた。おそらくローゼが魔法で威力を抑える気だろう。人を浮かすのは難易度高いはずなのに・・・・。流石は凄腕魔術師だな。
思考の海の中から出ると、目の前には地面があった。慌てて受け身をとって何とか無傷で着地できたが、着地姿が少しお粗末になってしまった。俺は起き上がって服についた砂を払い落とした。
さてっ、これからどう動くか考えなきゃな。
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