16

 ルイを送り届けた後、奏は久しぶりにフードを脱ぎ神と目の色をもとに戻して水浴びをして木の上で日向ぼっこをしていた。

 ここはカイルの縄張りの中心寄りのところだ。魔物は相手の強さを感じ、弱い魔物は自分からは近づかないそうだ。カイルは魔の森で最も強い魔物なので、この場所であればカイルの主である私に襲ってくる魔物はいない。それに魔の森はあまり人間が来ない。昨日までは珍しくルイもいたが、基本は誰も来ない。そしてルイは怪我が回復したばかりだ。流石に今日はこないだろう。


 この考えが甘かった。数分後、こんなことを考えていた自分を思いっきり殴りたくなるとは、夢にも思わなかったのである・・・・・。




 ガサガサ。


 近くの茂みで音がした。珍しく魔物が来たのかな? と思い木の上からのぞき込んで固まった。そこには、昨日宿に送り届けたはずのルイが私と同様に驚きに目を開いて固まっていた。そしてルイは、私から視線をずらさず呟いた。

「君は、神の愛し子か?」


 何がどうしてこうなった!!! なんでルイがここにいるの! 私は心の中で絶叫した。


 私が何も言えずにいると、しばらくしてルイの後ろの茂みが揺れ、3人が出てきた。

 ルイの後ろに目を向けると、私はまた固まった。そこには、細身の金髪碧眼と体つきが少しがっしりしてそうな赤い髪とオレンジの目の美少年が2人。さらに金の圧碧眼の美少年の隣には、水色の髪と薄紫のボン、キュウッ、ボンの美少女がこちらを見上げて固まっていた。



 どうしようどうしよう‥‥。なんでここにルイがいるの? しかもなんだか人数が増えてるんですけど!! てかやばっ! 今私髪の色変えてない!!! 黒目黒髪のまんまだ!!! 


 奏はさっき脳内で叫んだことと似たことを叫んだ。

 

  1、どうにかして即刻魔の森の外まで飛ばす。

  2、全速力で逃げる。

  3、カイルが来るまでどうにかごまかす。


 奏の頭の中は今、絶賛混乱中であった。混乱するあまり、どこぞのゲームよろしく3つの選択肢がこのように頭の中に浮かんだ。奏には、その選択肢を選ぶ余裕はなかった。

 ルイがまた口を開こうとしたとき、自棄で強い風を作りルイ達4人を魔の森の外まで飛ばした。その後全力疾走で家に走りながら、ルイに何か言われたら全力で誤魔化そっ!! と、心の中で誓った。




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「すげーなこれ。俺たち空飛んでる!!」

 アランはこんな状況にもかかわらず、楽しんでいるようだった。


「ローゼ大丈夫かい?」

「カイン様!!! 私はカイン様がいれば大丈夫です!!!」

 カインとローゼも、こんな状況にもかかわらずいつものように甘い空気を振りまいていた。


 本来ならばルイが何とか場を保つのだが、今回はなぜかルイは何も言わない。そのせいで、上空はカオス状態になりかけていた。

 そんなルイは、先ほどの光景を思い出していた。

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