15

「で? 1人で行ったぐらいだから、何かいい情報でもつかんだんだろ?」


 !? まったくたまに変に鋭いから余計にたちが悪い。


 アランの言葉にカイザルを含め、ほかの2人もクラストに目を向けた。


「ああ。はっきりとはまだ分かっていないが、愛し子らしき奴はり見つけた。」

「? 愛し子は必ず漆黒の髪と瞳を持っているはず・・・・。一目でわかりそうだが?」


 ルイのはっきりしない物言いに、カインは疑問に思い訪ねた。ルイはその問いには答えず、紅茶をまた1口飲んだ。


「おいクラスト、まさかカナデじゃないだろうな。」

 そんなルイの態度にカイザルはまさかと思い訪ねた。ルイはカイザルの言葉にゆっくり頷いた。


「カナデって?」

 ローゼはカナデについて尋ねた。ルイはカナデが冒険者になってわずか1年でAランクの冒険者になった凄腕冒険者であること。『死神』と呼ばれたいること。魔の森で主に活動していること。フェンリルを従えていること。人ではありえないほどの魔力を持っていること。いつも体全体を覆うフードを被り性別や顔がわからないこと。それ以外の情報はいくら探っても出てこないことなどを話した。



「おい、情報が少なすぎじゃないか? もっと他にあんだろ。交友関係とかさー。」

 

 あまりの情報のなさにアランがうめくように言った。カインは、少し考えるように手を口元にあてた。

 

 まさか見た目や冒険者としての評判しか分かっていないとは・・・・。だけどルイも叔父上も、つかめるならとうの昔に情報をつかんでいるはずだ。「カナデ」・・・・か。名前もあまり聞かない響きだ。不思議な存在だな。



「なあなあ。顔がフードでわかんないんだったら、不意打ちかなんかで取っちゃえばいいんじゃないか?」

 アランはどや顔で提案した。

「何をバカなことを言っているの? これだから脳筋は。はぁ。」

ローゼがすかさず眉を寄せ、アランの提案に反論した。


「あのね、今から言うことをそのかったい頭にしっかり刻み付けなさいよ! もしそんなことしてカナデって人が本当に愛し子だったら不敬罪で即処刑よ! それ以前に、もし女性だったとしても失礼極まりないわ! お・わ・か・り!!」


「はい! 申し訳ございませんでした!」

 ローゼの気迫にアランはほとんど反射で謝罪をしていた。

「大体あなたはいつも「はい、そこまで。」」

 さらに言いつのろうとしていたローゼをさえぎり、カインはローゼの肩を抱いた。そしてとてつもなく甘い顔で

「そんなに眉間にしわを寄せたらあとになっちゃうよ。怒っているときのローゼも可愛いけど、ぼくは笑っているほうのローゼが好きだよ。」

と言った。

「カ、カイン様!」


 ローゼの顔は見る見るうちに熟れたリンゴのように赤くなっていった。


 はぁ、またか。


 ルイは溜息をついた。この2人は、よくこんな風に甘い空気を出す。見ているこっちが恥ずかしくなってくる。心なしか部屋全体が甘い空気が充満しているような気がしてきた。そしてなんだか胸焼けまで・・・・・。誰か塩持ってきてくれないかな・・・。



 カインはそんなローゼをいとおしそうに眺めながら、クラストに聞いた。

「それで? クラスト。この後どう動くのか考えているんだよね。」

 

 あっ、一応覚えていたんだね。よかった。


「勿論だ。取り合えず、昼頃にもう一度魔の森に行ってカナデに会おうと思う。」

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