14
「ハッハッハ! だから言っただろう気を付けろって!」
朝の静かなギルド長室にカイザルの豪快な笑い声が響いていた。カイザルの向かいにはルイが恥ずかしさからか、顔をほんのり赤らめて愉快そうに笑うかいざるを眺めていた。
「そんなお前に客だぞ。おーい! 入っても大丈夫だぞ!!」
カイザルは笑いながら扉のほうに声をかけた。ルイは嫌な予感がして、恐る恐る顔を上げた時、扉が勢いよく開いてフードを被った3人が飛び込んで来た。
1人には耳元で
「おい、クラスト! なんで単身魔の森に行くっていう楽しそうなことに俺を誘わなかった!」
と叫ばれた。1人からは襟元をつかまれ激しく揺さぶられながら、
「ちょっと! 怒るのはそこじゃないでしょ! クラスト、単身魔の森に行くことがどれだけ無謀なことか分かっているでしょ! あなたはバカなの!!」
と怒られた。そして最後の1人からは
「2人とも落ち着いて。クラストが混乱しているよ。さてクラスト。君、どれだけ僕たちに心配かけたかわかっているよね? 何か言い訳はあるかい?」
と絶対零度のような声音で静かに怒られた。
三者三様に怒られたクラストは、昨日の心労も会いあまって意識が遠のきかけていた。
「お前ら落ち着け。そのままだとクラストが気絶しちまう。あとフードぐらいとれ。」
カイザルの言葉に3人はハッとなってフードをとりながらしぶしぶとクラストの向かいのソファに腰を下ろした。フードから出てきたのは、クラストにも劣らない2人の美男と1人の美女だった。
「予想はしていたが、やっぱりお前たちだったか。カイン、ローゼ、アラン。」
ルイは目の前に座る幼馴染を見、深いため息をついて、カイザルが入れてくれた紅茶に口を付けた。
「愛し子のことは今の我が国の最優先事項だからね。王太子である僕が動くのは当然だよ。それにお互い忙しくてこんな時じゃないと4人そろうことはあまりないしね。」
さわやかな笑顔をクラストに向けながらカインは言った。だが、王族の特徴である金髪とその間からのぞく碧眼はまったく笑っていなかった。
怒っている。相当ご立腹だ。クラストは背中に嫌な汗をかいた。普段は温厚なカインがこの顔をするときは相当怒っているときだけだ。しかもわざとらしくあまり4人そろわないところをついてくるあたり・・・・。心なしか部屋の温度が下がってきているような気がする・・・・・。
「カイン様のお手伝いをするのは、婚約者である私の役目よ! ついてくるのは当たり前だわ!」
この状況を知ってか知らずか、ローゼは腰までとどくふわふわの長い水色の髪を後ろに払いながら勝気そうな薄紫の瞳をクラスト向けていた。
カインがいるから絶対にいると思っていた。彼女はカインの婚約者だ。しかも2人は愛し合っている。それはもう2人の周りにはいつも甘い空気が漂っていると錯覚しそうなぐらい。今でもカインに肩を抱かれて甘々だ。
今回はカインの手伝いだけじゃないだろうな。歴代愛し子はほとんどが王妃になっているからな。
「俺もローゼと似たり寄ったりな理由だな。俺はカインの側近兼護衛だから。」
こいつもいると思っていた。クラストはアランに視線を向けた。アランは紅の髪を揺らしに人懐っこいオレンジの瞳をクラストに向けていた。
こいつは案外詐欺だよな。何せこいつは見た目だけは可愛い。とてつもなく、可愛い。なのに中身は脳き・・・・・・げふんげふん。えー、戦いが好きなのだ。しかもへたに腕が立つからたちが悪い。だが、口が多少? 悪いのが玉に瑕だな。
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