13
ポトン。ポチャン。
水の音にひかれるようにクラストは目が覚めた。
今のは、夢・・・・か? いや、それにしては・・・。
クラストは考え込んだ。
そう。今見たものは夢とするにはあまりにも鮮明すぎた。物心ついた時から今さっきのような夢は何度か見た。けれどそれはあの女が一人立っているだけで、音も景色もあまり鮮明ではなかった。あんな鮮明なものは初めてだった。まるで実際に体験したかのような感じだった。
「目が覚めたんだ。体大丈夫?名前は・・・・ルイで会ってるよね?」
!? 声に驚いて振り向くと、料理を持った奏が立っていた。相変わらず顔はフ-ドに隠されたままだ。それにしても体? 名前? そこまで考えて俺は魔の森で強力な魔物に囲まれたことを思い出した。我ながらよく生きてるなと感心する。冗談抜きで死ぬかと思った・・・。名前もカナデと会った格好のまま魔の森に行ったから、おそらく服を見て俺がルイだという結論に至ったのだろう。
「あ、ああ、合ってる。体も大丈夫なようだ。どこも痛みを感じない。」
俺がそう答えるとカナデは、
「そう、良かった。これ作ったんだけど食べれる?」
そう言って手に持っていたお盆を渡した。
皿の中にはできたての料理があった。俺はありがたくその料理を食べた。とてもうまかった。
料理を食べるルイを見て、ホッと息を吐いた。この調子だと、もう町まで送っても大丈夫だろう。奏は頭の中でこれからの予定を立て始めた。
「ルイ、動けるようだったら町に戻って休んだほうがいいと思う。ここじゃあまりゆっくり出来ないから・・・。」
私の提案にルイは少し考えた後、頷いた。元々目が覚めたら町に返すつもりではあったけど、動けないけが人を抱えて無傷で森を抜けられる自信はあまりない。カイルが聞いたらすごい勢いで否定されそうだけど・・・・。
「今日はなんか少ないね、カイル。」
『ああ。拍子抜けするほど少ない。』
「とりすぎたのかなあ。ちょっと抑えたほうがいいかなあ。」
『そうしたほうがよさそうだな。森の生態系が狂うのは我の本意ではない。』
「おい、お前ら!なんでこの状況でそんなのんきに会話なんてしてられるんだ!!」
「『? 普通のことしかしてない/ぞ。』」
「~~~~~~っ! そういうことじゃない!!」
カイルと会話をしていると、カイルの背に乗ったルイが怒ったように叫んだ。
そう、奏たちは今木の実をとっている。のではなく、ルイを町まで送る途中襲ってきた魔物を倒している真っ最中なのだ! 奏はもちろんルイを乗せているカイルも普通に戦っているので、ルイはカイルに振り落とされないように必死でしがみついている状態だった。そんな状態が森を抜けるまで永遠と繰り返された。
森を抜けたころには、ルイはもうぐったりしていた。そんなルイを奏は急いで宿まで送り、ベッドに寝かせた。ルイは横になるとよほど疲れていたのか、すぐに規則正しい呼吸音が聞こえてきた。奏はルイが疲れている原因は自分であるとは露とも思はず、よっぽど疲れてたんだなあ。と、のんきに考えながらカイルと魔の森に戻っていった。
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