≸1年後≸



 冒険者登録を終えた奏とカイルは、カイルが住んでいたところを拠点に魔の森とギルドを往復する生活を送っていた。魔の森に住んでいる理由はもちろん、奏があまり人と関わりたくないのと、森の中では人が少ないので幻術を解いて黒髪黒目の奏本来の色で生活できるからだ。



 今日はAランクになったお祝いに、カイルとギルドの食堂で食事をしていた。

「よう、そこのフェンリル連れた奴。俺らとパーティー組んでやるよ。」

 偉そうな男が声をかけてきた。男の後ろを見ると、男の仲間らしき人たちがニヤニヤしてこちらを見ていた。

 はぁ、またか。思わすため息をついてしまった私は何も悪くはないと思う。最近ギルドに来るたびにこうやってパーティーに誘われるのだ。毎回断っているのにこりない連中だ。ここまで頻繁だと鬱陶しくもなってくるというもの。せっかく今日は久しぶりにギルドでカイルとご飯を食べているのに、台無しだ。

「ってめぇー。わざわざこの俺様が誘ってやってるってのにいい度胸だなー!!」


 どうやって断ろうか考えていると、それを無視したと思ったのか男が剣を抜いた。

 

 やれやれ。マルティアノの奴らといいこの男といい、なんでこんなにけんかっ早いやつが多いんだ?

 男に反撃しようとしたら、誰かが男の剣を持った腕をつかんだ。


「ギルドでは冒険者同士の私闘は禁じられているはずだが?」

 剣を抜いた男の後ろに、フードを深くかぶった人が立っていた。声からして多分男だ。

「あぁっ! てめぇ、何もんだ? こちとら今取り込んでんだ。痛い目見たくなきゃ邪魔すんな!」

 男がフードの男を脅すが、フードの男は動じた様子はなく堂々としていた。


「はぁ、そうか。じゃあお前をギルドの決まりを破ったということで職員に報告しよう。」

「いててててっ! 離しやがれっ!」

「ハハッ。無理だね。」


 そう言ってフードの男は荒くれ男の腕をひねり上げ、笑いながらどこかへ行ってしまった。

「あの荒くれ男何がしたかったんだろうね。」

『そりゃぁ最初にあ奴が言っておった通り、パーティーへの勧誘だろう。我らは受けた依頼はどんなものもすべて成功しているからな。まぁ、人にものを頼む態度ではなかったが・・・。それよりあのフードの男何者だ?顔は見えなかったが、おそらく相当の手練れだぞ。』

「あぁ、それは私も思った。何者だろうねあの人。まっ、あまりかかわらないだろうしご飯食べちゃお!」

『うむ、そうだな。久しぶりの外食だ。』


 奏とカイルはさっきの騒動のことなど忘れて食事を開始した。あの男の目的が、自分たちであるとも知らずに‥…。

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