町について奏とカイルが最初に向かったのは、冒険者ギルドだった。元々、前の世界のせいで人間不信になってしまった奏は、町の宿には泊まらず魔の森を生活の拠点にすると決めていた。

 


 冒険者ギルドについたのが昼過ぎだったためか、中は人が少なかった。奏とカイルは、ギルドの奥にある受付に向かった。

「こんにちは。ご用件をお伺いしますニャ。」

 受付にいた猫耳のおねえさんが話しかけてきた。

 獣人さんかな?私は内心そう思った。


「冒険者登録とこの子に身分証をお願いします。」

 奏はカイルを見せながら言った。受付のおねえさんは、カイルを見ると門兵と同じように驚いた。

「ニャ――――――!! フェンリルじゃニャいですか――――――!!!」

 奏はそんなに驚くものだろうかと呆れながら、呆然としている受付のおねえさんに話しかけた。

「あの、そろそろ冒険者登録をしたいんですけど‥‥。後この子の身分証も。」

「ニャッ! そうでしたニャ。申し訳ありませんニャ。こちらの書類に名前、年齢、職種、そちらのフェンリルの名前を記入してくださいニャ。」

 私は書類を受け取ると、最初に自分とカイルの名前のみを書いた。職種は魔術師にした。1番悩んだのは年齢だが、見た目と同じ16にした。

 書類を提出すると、受付のおねえさんはカードを取り出した。カードに書類に書いたことを映し私に針を渡した。

「カナデ様ですニャね。こちらの水晶玉に、血を1滴たらしてくださいニャ。」

 私は、一気に血の気が引くのを感じた。その行為で奏が真っ先に思い浮かんだのは、あの魔術師にされたことだった。一瞬目の前が真っ白になった時、左手に温かいものが触れた。驚いてみてみると、カイルが心配げにこちらを見ていた。


 そうだ、ここはもうマルティアノ王国ではない。それに今の私にはカイルがいる。


 カイルに勇気づけられた私は、わたされた針で指をさし水晶玉に自分の血を押し付けた。血は、カードに吸い込まれていくように消えた。受付のおねえさんは、カードを奏に手渡した。

「こちらはギルドカードですニャ。依頼を達成されたらこのカードに記録されますニャ。あとギルドに預けたお金の額も確認できますニャ。そしてこちらは、そちらのカイルさんの身分証ですニャ。これらのカードには偽造防止の魔法がかかっていますニャ。ギルドカードの偽造やなりすましは重罪ですニャ。他にも規則はありますが、いずれも破った場合はそれ相応のペナルティーが科されますニャ。詳しくはこちらをお読みくださいニャ。なくされた場合は再発行できますが、手数料として銀10枚いただきますニャ。」

 そう言って1枚の紙を差し出した。


「次は、ランクについて説明しますニャ。ランクはE、D、C、B、A、Sの六段階に分かれていますニャ。依頼を受けて達成していくと、ランクが上がっていきますニャ。ランクが上がるにつれ、以来の危険度と報酬額が変わっていきますニャ。依頼は、自分のランクの1つ上のランクまで受けることができますニャ。依頼はあちらの掲示板に貼ってある中から選び、わたくし共に申請すれば受けることができますニャ。依頼達成された場合は、こちらの受付で達成証拠を提出していただくと完了ですニャ。依頼に関係なくても、道中で倒した魔物や採取した薬草などを買い取ることができますニャ。大体の説明は以上ですニャ。あっ、申し遅れましてニャ。あたしは受付のミレーナと言いますニャ。何かご質問はありますかニャ?」

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