「わかった、契約の仕方を教えて。」

 私はフェンリルをまっすぐ見て、そういった。


『あい分かった。己の名を名乗り、互いにに魔力を流す。その後、契約する魔獣に名を与えることで成立する。』

 名前か‥‥、どうしようかな。奏が名前を考えていると、ふと実家で飼っていた愛犬を思い出した。奏は優しく微笑み、フェンリルに向かい合った。そして、フェンリルのモフモフな体に触れた。

「それじゃあ始めるよ。私の名前は、カナデ・イチノセ。あなたの名前は、カイル。カイル、私と一緒に旅をしてください。」

奏は、フェンリルに魔力を流しながらそう言った。同時にフェンリルの魔力が流れてくるのを感じた。


 なんだか不思議な感じがした。目の前のフェンリル・・・・カイルと見えないものでつながった感じだ。

『契約はなされた。これからよろしく頼む、カナデ。』

カイルは嬉しそうに言った。



 カイルと契約した後、カイルの住処で一晩過ごした。朝起きた時、朝日を浴びたカイルの毛が黄金に輝いたのには驚いた。話を聞くと、カイルは聖獣なんだって。朝から驚きっぱなしでなぜか異様に疲れた・・・・。

 その後、カイルの背に乗せてもらい森の出口に向かった。余談だが、カイルの毛はめちゃくちゃ気持ちよかった。出口に向かう途中、これから向かう町について聞きながら、襲ってくる魔獣を倒し奏オリジナルの亜空間にしまいながら進んだ。奏の日本から持ってきた荷物も入れてある。

 この国はフランセル王国、今向かっている町は、マルセルという王都の次に大きい町だ。公爵が納めている。近くに魔の森があるので、冒険者ギルドや武器屋という戦いに必要なものを売っている店が多いらしい。奏はカイルとの相談の末、冒険者ギルドというところで今後の生活資金を稼ぐことにした。



 森を抜け町の入り口が見えてきたところで、カナデはカイルの背から降りた。そして、服についているフードを深くかぶり、目と髪の色を魔法で変えた。前の世界では、黒目黒髪の人を見かけなかったから念のためだ。


「通行所の提示をお願いします。」

 町に入ろうとすると、入り口に立っている門兵に声をかけられた。

「ごめんなさい。田舎から出てきたばかりだから、通行所は持っていないの。」

 私は、あらかじめ決めていた設定を門兵に話した。

「そうか。では仮通行所を渡しておく。そっちの・・・・・・えっ、フェンリル!」

 門兵は、カナデの隣にいるカイルを見て驚いて、文字どうり飛び上がった。奏は、人って驚くと飛び上がるって本当だったんだなあ。と、場違いなことを考えつつカイルと契約していることを話した。ちなみにカイルは、柴犬サイズで奏の隣にいる。

「契約って・・・・・・・。アハ、ハハハハ。嘘だろ。しかもフェンリルって。こんな子供が…。」

 門兵は遠い目をしながら、何やらぶつぶつ呟いていた。

「そっそれじゃあそっちのフェンリルの通行所も出しとくな。早めに冒険者ギルドに行って、そのフェンリルの身分証を作ってもらったほうがいいぞ。通行所も作ってもらえるから、お嬢ちゃんもついでに作ってもらいな。」

と言って通してくれた。奏たちは、門兵にお礼を言って町に入った。この数秒で、門兵が若干老けたように見えたが、気のせいだろう。


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