その後2(国王視点)
執務室で宰相が目を通した書類に適当にサインをしていると、愛娘のクリスティーナが飛び込んできた。
「どうしたクリス。そんなにあわ「大変ですわ、お父様!」」
クリスはよほど慌てているのか、俺の言葉をさえぎって叫んだ。詳しく聞いてみるとクリスは、聖女の力が使えなくなったといった。同じく、ベルンハルトは魔術が使えなくなり、キースとジークフリートは剣を握れなくなったそうだ。
「「陛下! 一大事でございます!」」
俺がそんな馬鹿なと思っていると、騎士団長と魔法師団長がほぼ同時に執務室に飛び込んできた。詳しく聞いてみると、こちらも魔法と剣が使えなくなったようだ。しかも団員までもが。
あまりの事態に状況が呑み込めないでいると、隣にいた宰相の顔が青を取り越し真っ白になっているのに気が付いた。そのことを指摘すると、宰相は叫んだ。
「陛下! そんな悠長なことを言っている場合ではありません! 彼らの話が本当ならば、今の我が国の守りは裸同然!今関係が悪化している隣国のアノストロ帝国から攻め込まれれば、一瞬でこの国は滅ぼされてしまうのですよ!」
そんな大げさな。隣国はまだ攻めてこないと、つい先日お前が言ったばかりではないか。
やれやれと首を振り、いまだ興奮しているクリスを落ち着かせようとする。すると今度は、見張りの兵士が飛び込んで来た。
「失礼いたします! 隣国のアノストロ帝国が攻め込んできました! もうすでに国境は突破されたものと思われます!」
なんだと! 急いで兵を収集しなくては!俺は急いで各団に召集令を出した。
出陣の日、兵たちが集まっているであろう広場に向かった。だがそこには、兵は1人もいなかった。
どういうことだ! もう敵は国内に侵入しているというのに!
俺がこの事態の説明を聞くために宰相を呼ぼうとした。だがその時大きな音がして、何人もの鎧をまとった男たちが城内に侵入してきた。なんと敵はすでに城を囲んでいたのだ。
今の城には、敵に対抗できるだけの兵力はおそらくない。マルティアノ王国王城は、たった数時間で無血城落した。
その後マルティアノ王国は、アノストロ帝国の一部になった。俺を含めた元マルティアノ王国の元重鎮たちは奴隷の身分に落とされ、何もないド田舎に監視付きで追放された。そして、その地の鉱山で働くことを義務づけられた。
娘のクリスティーナも焼き印を押され、奴隷の身分に落とされたと聞いた。現状に納得できず暴れまわっているようで、奴隷の中でもひどい扱いを受けているらしい。
これから俺は、監視付きの息苦しい空間で死ぬまで過ごす。もう娘にも会えない。
今思い返してみると、こうなった原因は異世界から召喚したあの娘にあるように思えてくる。あの娘を殺したのがいけなかったのか。はたまた召喚したのがいけなかったのか。今となっては何もわからない。
ただ1つ言えるのは、俺がどこかで選択を誤ったということだけだ・・・・。
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