第18話 咬まれる
新しく家族を迎えた。
昔飼ったことのあるハムスター。
劇的に家の空気がいい方向に変わった。
思春期でギスギスした物言いばかりだった子供が柔らかい雰囲気になったし、私も子供に口煩く言わなくなったと思う。
まだ馴染めていないハムスターと触れ合いたくてウズウズする親子。
冷静に思い返すと、子供と何か一つのことに向かって共同作業したのは初めてかもしれない。
小さな丸い体でちょこちょこ走り回り、小さな手でご飯を持って小さな口に運ぶ…何て愛らしいんだ…
昔飼っていた人懐こい『あのコ』を思い出しながら、まだ懐いていない『このコ』に何度か手を近づけてしまった。
正直、浮かれていた。
ハムスターの気持ちを蔑ろにしてしまった。
愛らしいハムスターが指にぶら下がっている姿は、想像以上に衝撃的だった。
指に歯が食い込んでますよ?などと冷静に見ていたが、滅茶苦茶痛い。
まだ縄張りが完成していないところに、信頼関係を構築できていない巨人が手を突っ込んで来たら、誰でも戸惑うし怒るよね…申し訳ない。
世話するとき以外でゲージを開けるのを止めた。
人間同士の関係性と同じだなって思った。
自分がされたくないことは、他の誰かにするべきではない。
相手の嫌なことをすれば、その度合いによっては咬まれるし、仲良くしてもらえなくなる。
自宅から自由に外出もできず、外部との交流もほぼなくなってしまって、少しずつ他者に対する心遣い気を忘れてしまっていたようだ。
お世話してるつもりが、小さな小さな存在に大切なことを思い出させてもらった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます