第17話 シミ
10年ほど前にエステティシャンに言われたんだ。
「少し大きめのシミの元が、左頬骨の上の方にあります。10年ほど経つと薄く見えるようになって、年を重ねるごとに大きく目立つようになります 。」
当時は言われても全く認識できなかったのだが。
あぁ、全く。。。
洗顔後に初めて認識したそのシミは、エステティシャンの言葉通り、うっすら認識できる(但し、まだ他人には分からないだろう)ほどになっていた。
「シミの元は、一体いつできたのだろう」
などと、分かるはずもないシミの起源について考え始めてしまった。
考え始めて数分後、左頬骨上部のシミを気にしていたはずなのに、何故か内面にあるシミを見ていることに気がついた。
「これはダメなヤツだ。闇に触れるヤツだ。これ以上はダメだ、触るな、引き返せ。」
自分で自分を引き戻そうと試みるが、見てしまったが最後、無駄な足掻きである。
顔にできたシミの起源は分からない。
でも、内面にできたのは違う。
誰かにつけられたのではない。
自らシミの元を落としているのだ。
「多分あの時にできたのだろう」と、どれも吐き気がするほどに分かってしまう。
古く、未処理のシミほど根が深い。
シミの元はとても小さいはずなのに、目視できる頃には驚くほどの大きさに成長していたりする。
タンスの奥に士舞い込んだ洋服を、忘れた頃に出して広げてみたら、点だったシミが大きく目立つようになっている時に似ている。
一年に数回やってくる内面の闇。
もっと上手くやり過ごせるようになれたら、左頬骨上部のシミにも愛着を持てるようになるのだろうか。
シミとの付き合いは始まったばかりである。
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