第2話 ルール説明

「あの~もういいかな、話しても」

 決して大きくない声。それでいてよく通る声。ただそれを聞いたとき少し寒気を感じた。

 そこには見知らぬ少年がいた。誰だ? 小学三年生くらいに見えるけど……

「是非、話して欲しい。僕らも色々聞きたいしね」音無が驚かず冷静に答えた。

 意外だったのは全員が静かだったことだ。驚いて声が出ないのか、音無に任せればいいやと投げやりなのか、はたまた音無が自分に任せるよう言ったのか。とにかくこれだけの人数がこんな状況で静かになるのは奇妙な感じだ。

 とても嬉しそうな顔で少年は話し始める。

「僕は地獄の住人。名前は無いかな。ここは僕が創った空間だよ。君たちにゲームをしてもらいたくてここに呼んだんだ」

 そう言ってポケットから何かを取り出した。サイコロか?あれ。そもそも地獄って……?

「このサイコロを使ってゲームをしてもらい、」「待ってくれ、ちゃんと家に帰れるんだよな」と音無が割り込む。

 少年は一瞬怪訝な顔をしたが直ぐに笑顔で答える。

「もちろん、このゲームが終わったらいいよ」

 待てよ、これは俺の好きなサイコロゲームじゃねーか。こんな時にあれだが物凄いテンション上がってきた。何とかの目が出たら~とかそういうのだろ。これはやるしかない!


「なあ、そのルール、詳しく教えてくれよ!」と俺は声を上げた。

 すると、さっきまでの沈黙を破り、クラスメイトが騒然とし始める。クラスの数人が「は? こんなふざけたのやんのかよ!」などの怒声を飛ばす。

「落ち着けよ、みんな」

 そんな中が森岡が割って入ってくれた。持つべきものは親友だなぁ。

「こいつのイカレたゲーム好きは今に始まったことじゃないだろ。話を聞くしか選択肢は無いみたいだし、おとなしく聞こうぜ」

 前言撤回、それは言い過ぎだろ。周りも納得してるだと……これは後者の発言に納得してるんだよな、そうだよな。そうだと思おう。

「もういいかな、ルール説明が中々できないなぁ。まったく……面倒くさい。ルールは簡単。こののサイコロ、目は1から7まで。全員が一人一回ずつこのサイコロを振って7の目が出たらアウト。それ以外の目が出たらオッケー。これでこのゲームの説明はしたよ。さあ、始めよ!」

 少年はまた顔を歪めたが、直ぐに笑顔で説明を始めた。また寒気がした。

 正七面体は確か無いはずだから限りなく近いってことなのか。いや、こんなことができる奴だから本物かもしれない。そもそもこのゲームをやる意……

「よし、始めよう。順番は出席番号でいいな」音無が声を張る。

 ということは俺は最後。ごちゃごちゃ考えたって仕方ない! ゲームを楽しむぜ。

「ちょっと待って! 皆さん、ゲームを始める前にサインしてね。名前を書くだけでいいから。ではルールへの同意が無いとゲームができないんだよね」

 そう言って少年は真っ白な紙を配った。不思議に思ったが、できないというなら仕方がない。全員書く。反対してた者も諦めて書いたようだった。


 この時俺は、いや、俺達は気付かなかった。ルールを聞かなかったことに……

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