第四話 向こう側に在る、少女
私は跳ね起きて、端末を耳に強く押し当てた。
「はい、祥子です」
「おねえちゃんでよかった、のかな? 私、アトウ」
「もしかして、さっきの……」
「そう。番号教えてもらったから。迷惑だったらごめんなさい」
電話の向こうで、申し訳なさそうにする雰囲気が伝わり、私は全力で首を横に振る。
「そんな、大丈夫だよ! ごめんね、ありがとう」
電話の向こうはやはり、あの観覧車の前で出会った少女だった。
あの時は
「アプリとかインストール出来ればよかったんだけど」
「大丈夫大丈夫。こうしてお話しすることが大事。昔から私、そっちのほうが好きな人間だから。それに……」
アトウちゃんの声が聴けて嬉しいから。
感情が
全くもって、「普段の私」らしくない。そして、「本当の私」そのものだ。
気持ちが伝わったのだろうか。少女からえへへ、と嬉しそうな笑い声が零れる。
鈴を転がすような透明感のあるその調べは、未練がましく記憶に
——随分長い時間話していたように思える。気が付くと通話は終わっていた。
途中、急激にまぶたが重くなってきたせいか、何を話したか随分と
ただ、一つ無茶なお願いを彼女にしたのは覚えている。
それは、今週の土曜日、またあの遊園地で一緒に遊びたい、というものであった。
答えは保留。年上のお姉さんの急すぎるお願いに戸惑ってはいたが、どうだろうか。
不思議と上手く行くような気がした私は、ようやく長い一日から解放され、穏やかな眠りへと落ちていく。
エアコンの羽が打ち鳴らすキィキィという、普段であれば耳障りな音ですら、今の私にとっては
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます