先輩には、先輩の。

男の先輩には見覚えがある。先輩と同じクラスの

桜木先輩だ。明るくて、みんなに人気がありそうな先輩。って言うのが僕の印象。

僕とは真逆だった、もしかして夏井先輩は桜木先輩の事が…?

「ん?どした?原くん」

「あ、いえ!なんでもないです!」

「そう?ならいいけど!」

僕は慌てて、微笑む。


夏井先輩には僕がどう映っているのかな、もしかしたら、僕なんて映っていないかもしれない。いや、それはないよね。だって僕の事撮ってくれたし、少しは映ってるかな。

先輩には先輩の好きな人が居る、僕には僕の好きな人が居る。今、僕の横で楽しそうに笑う先輩が、僕は…。

好き、と言う言葉を口に出してしまいそうになって飲み込んだ。言ってしまえば終わってしまう気がしたから。


「あ!やばい!そろそろ行かなきゃ!補習〜…。」

「そうなんですね、補習頑張ってください。」

「うん!ありがと!」

走っていく先輩の後ろ姿に、やっぱり言いたくて、

「…好き。」

と聞こえないように呟いた。


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