第1-4話 ゴブリン少女の一日 その4
ダークゴブリンの少女の瞳が大きく見開かれる
(丸い目だなー)
その瞳はピウリほど丸っこい訳ではないが、ピウリ本人は自分の瞳を気にした事が無いので、
そう感じる
「お腹、空いてるでしょ?
アタシの食べかけで悪いけど、どうかなー?」
少女は俯き加減に何も言わずにピウリからコジノを受け取ると、
一心不乱にかじりついた
飢えていたのだろう
少女の食べるペースが少しゆっくりになり、落ち着いた所でピウリが口を開く
「アタシはピウリ、アナタのお名前はー?」
少女の手が止まる
チラッとピウリの瞳を見た後、また顔を俯ける
「クーシ…」
ぼそっと呟くような声で少女が名前を告げる
「そう、クーシ、ヨロシクねー」
ピウリは明るく返事をする
ダークゴブリンの少女、クーシは
スリをしようとした相手から施しを受け、
更には自己紹介を行われると言った事態は生まれて初めての事である
どうして良いか分からず視線が泳ぐ
そして最後にピウリの丸い瞳を捉える
なんだかその瞳に吸い込まれてしまいそうな錯覚を覚える
そんな挙動不審とも取れるクーシの行動をピウリは前向きに捉えていた
逃げることなく名前も告げてくれた
根っからの悪人ではない、この子を役人に突き出す事は簡単だけど
それはしたくない
「ねえ、クーシ」
ピウリの言葉にクーシの動きがびくっとしてから止まる
「これからはさ、スリなんてやめて生きてこう」
ピウリは努めて優しく話しかける
その言葉にクーシはまた俯く
「でも、どうしていいか分からない…」
スラムに住むもので真っ当な生活を送っている者は少ない
物乞い、スリ、強盗、詐欺なんて事もある
「アタシはさ、お店やってるんだー」
ピウリはクーシに話しかける
「だからさ、何でも良いよ、誰かから盗みをせずに見つけたもの
ゴミでもガラクタでもいいからさ、アタシの店にもってきなー」
その言葉に俯いていたクーシが顔を上げる
「全部は難しいかも知れないけど、買い取ってあげるよー
アタシも昔は色々漁って生活してたんだよねー」
クーシはピウリの言葉に聞き入っている
「お店の場所教えたげるから、何かめぼしいもの見つけたらいつでもいいから。
あ、深夜は店じまいしてるから次の日にね」
「後、お腹空いてたらうちに来な、食事位はなんとかしてあげるよー」
こうしてゴブリンの少女はダークゴブリンの少女と言う顧客を得たのだった
魔族の街の道具屋さん くるっくる @kurukkuru
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。魔族の街の道具屋さんの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます