第2話 あの夜の事実
女は夜道を歩いていた。雨の中ハイヒールを
女性が一人で夜道を歩くのは安全とは言えない。けれどもここは田舎だし、自分は傘を持っている。万が一襲われでもしたら傘で攻撃出来るだろうと女は思っていた。
「夜中にハイヒールを履いて、危ないよ」
踏切にさしかかったところで聞こえてきた。
何だろう? そう思った瞬間に女は引きずられた。何が起こったのか理解出来なかった。地震?
地面に押し倒され、誰かに押さえられた。自分の上には帽子とレインコートをかぶった男がいた。怖い、本能で抵抗する。顔を殴られ、男の手が自分の首を
殺される。そう思った瞬間、明かりが見えた。車のライトだった。車は踏切の前で一時停止をしている。男の力は一瞬緩み、女は車に駆け寄った。
「助けて!」
女は叫びながら車の窓を叩こうとした。ドライバーが一瞬こちらを見た。これで助かる、女はそう思った。
けれども女が窓に触れる直前、車は走り去った。女は再び草むらに引きずり込まれた。
またすぐに車のライトが見えた。けれども今度の車は踏切では止まらずに行ってしまった。もう助からないかもしれない。女の頭に浮かんだのは愛する男性の顔だった。
帽子の男に殴られる。先ほどは恐怖だったが今は必死になって抵抗している。
「顔に傷をつければお前を愛するのは俺だけになる」
男は言った。男は刃物を女の顔に近づけ皮膚を切り裂いた。女は自分の顔を切られた事を知った。
顔に傷?
「許さない……」
女の憎悪が頂点に達した。女は武器を探した。手にした細長い物で男の目を突き刺した。武器は小枝だった。
男は両手で顔を覆い叫び声をあげながら倒れた。
倒れた男が『弱い者』に見えた。
自分を
女は自分の傘を見つけた。傘を閉じて、先端で男を刺した。力一杯、何度も刺した。刺す度に男は「ぐえっ」と声をあげていた。
女の気は治まらない。自分の手で痛みを与えないと反撃にならない気がした。けれども女は人を殴った事がない。もし外して地面を殴ってしまうと自分の手を痛めてしまうと思った。
男はうつ伏せになっている。目を押さえて
女は男の首を掴み、地面に男の顔を叩きつけた。男は「ぐわっ」と叫んで鼻血を出した。
女は少しすっきりしたのか、冷静になってきた。殺してしまったら自分が捕まるのだろうか。襲われたのはこちらなのに。詳しい法律をよく知らない。
殺してはいけない。けれども殺さないレベルの反撃は許される錯覚が起こっていた。
女はハイヒールで男を踏みつけた。すぐに110番をした。
調査の結果、男は女のストーカーだった。
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