第10話 休日の定義

 午後の授業もそつがなく終わり、笹葉を連れた学校生活1日目は何とか無事に終わった。その日の夜は日曜のそれと大差なかったが、1つだけ変わったことといえば、風呂上がりに軽いファッションショーが発生したことぐらいか。


 天斗としては寝巻きなんてどうでもよいという意見だったが、笹葉にとっては重要なことらしい。沙織からもらったお下がりの服を天斗の目の前で順々に着替えていき、天斗はそれを参考書片手に採点していった。


 もらった服を全て試着し、お気に入りの一着は決まったのだが、「パジャマにするのはもったいないですね……」と笹葉が一考。その結果、その服は明日のお出かけ用となり、昨日に引き続いて俺の上着が寝巻きワンピースとなった。なんて気まぐれな奴なんだろうか。


「起きてください~。もう朝ですよ!」

 

 そんなこんなで迎えた朝。笹葉は昨夜のファッションショーで決めた服を身にまとい、朝6時に天斗を起こす。


「ん……今日は休みだ。火曜日だろ?」

「火曜日だからですよ! 今日は祝日じゃない……って寝ないでください!」


 笹葉の話の途中で再び布団をかぶった天斗に、笹葉は怒って布団を引きはがす。


「……大学生は好きな日を休日に出来るんだ」

「……ずる休みじゃなくて?」

「そうだ。だから今日は休み。七時まで寝かせてくれ」


 天斗は笹葉が小さい体で抱きかかえている布団を取り返そうとする。が、笹葉もなかなか譲らない。


「休みならデパートに行きたいです!」

「嫌」

「なんで!?」

「休日だからだ」


 2人の布団の引っ張り合いは続く。


「休みだからいくんですよ!」

「休日というのはな、平日に蓄積した疲労を取り、来週に向けて英気を養うためにあるんだよ」

「むずかしいことばばっかり使わないでください!」

「おこちゃまには難しすぎたか?」

「……!!」


 なかなか布団を離さない笹葉に腹が立った天斗は、大人げなく笹葉を煽る。声にならないほど頭に血が上った笹葉は、顔を怒りでゆでだこのように真っ赤にさせた。両者互いに一歩も譲らず、布団を引っ張り合う。その膠着状態は、2人の思いもよらない結末で幕を閉じることとなる。


「「あ」」


 2人に引っ張られていた布団は耐えかねて「ビリリッ」と音を立てて、仲良く半分こされたのだった。

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