『小さなお話し』 その114

やましん(テンパー)

『そこのけそこのけすまほさまがとおる』


 西暦、おそらく、2400年から3000年の間あたり。


 多くの人類は、文明を失ない、まあ、それなりの生活をしておりました。


 SF映画や、むかしのやましんの、小さなお話しみたいには、化け物が現れたり、宇宙人が来たり、と、そういうことはなく、ひたすら、人力に頼った、じみな生活です。


 何があって、こうなったのか、知ってる人も、いるにはいたのですが、知ってる人が、どこにいるのかは、おおかた、分かりませんでした。


 

 これは、ある、小さな、普通の町の様子です。


 人口は、1000人足らず。


 山間の盆地で、自治会を開いて、なんとか、生きてきました。


 きょうは、おまつりです。


 お神輿が、町のなかを練り歩きます。


 気候は、不安定で、地球自体は、おだやかな間氷期を過ぎて、また、氷河期に戻る様子です。


 しかし、どうも、変化が不順で、日照りばかりだったり、雨ばかりだったり、激しい嵐が来たり、来なかったり、規則性がはっきりしません。


 人々は、なんとか、平安な生活がしたかったので、神様にお祭りを捧げておりました。


 お神輿の中には、見てはならない、御神体が納められた箱があります。


 1日かけて、山の中を移動し、夕方、日が沈むころ、神殿に帰りました。


 それからは、酒盛りになります。


 お神酒は、たくさんは作れないので、だいたい、在り合わせのものと一緒に、みなで、ぼつぼつと、飲みます。


『まんず、今回は、無事にできて、よかたな。』


『だな。まあ、飲めたまいませ。』  


『あい。』


『とうちゃん、おらにも。』


『おまえは、まだ、おそとだ。』


『おそと、って、なんだ。』


『むかしから、そういうのら。』


『ふーん。ねぇ、御神体って、なに?』


『そりは、知ってはならないことだ。ひとは、むかし、知ってはならないことを知り、天にそむいた。だから、われらは、戦いはやめた。兵隊は持たない。武器ももたない。ま、もとも、なんでも、使い方で、武器にはなるが、それは、禁じ手だ。となり村までは、途中に大地の裂け目がありまして、外には出られないだし。それも、天の罰だんな。』


『ふんだかあ。こあー。もし、みたら。どうなる?』


『わからね。だれも。しかし、恐ろしことが、起こると、聞くな。』



『ふうん?巫女さまは、どこから、きたのやな?』


『そりは、………………』



 そのときです。


 聞いたこともない、不可思議な音がしました。


『びびびびび〰️〰️〰️〰️だだだだだあ〰️〰️〰️。ざゃざゃざゃざゃあ〰️〰️〰️。緊急、緊急、付近のひとは、応答せよ。』


 みな、固まりました。


 それは、御神体の方から聞こえるのです。



 『あやあ〰️。こ、こらは、なんかあ?』


 『わからねが、御神体が、震えてましぞ。なんといふ、不気味な声やなり。』


 『あやあ〰️〰️。天罰かやな。神殿幹どの、なぬかあ?』


 『わからねな。はじめてのことな。あやしきやあ。うんじゃあまいやらあ。うんじゃあまいやらあ。めんくいにこ。うんじゃあまいやらあ。めんくいにこ。うんじゃあまいやらあ。近づかねが、最大なりべし。』


 『お祈りは、効き目なしかやな。』


 『直ぐには、効かね。』


 『そうさかや?』


 『うんだね。』

 

 『巫女さま、どう、みたてるやな?まだ、なりやまね。』


 『なかを、見ることね。』


 『いやあ、そりは、ならぬ。けして、ならぬね。』


 『なりやまない、うちに、見ないと、バチがあたる、が、なっているときならば、道が、開かれるであらう。』


 『ならぬ。ならぬ。』


 『神殿幹と、巫女さまが、喧嘩になた。こりは、吉兆かなや。』


 『喧嘩に、吉兆かはないなり。』


 『あ、とまた。』


 『やれやれ。ダメだな、これは。』


 巫女さまが、ため息をつきました。

 

 夜は更けて行きました。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

  

 それ以来、御神体が鳴ったことはないのです。



 いったい、なんだったのかは、誰にもわからないままです。


 かつて、外部から入ってきた巫女さまは、何かを知っておられたらしいのですが、もはや、何も言いませんでした。


 箱は、開けられないままになりました。


 彼らは、地球最後の、『星間移住船』に、乗れなかったのです。


 みな、空間充電装置装備の、最新、最高の、スマホの使い方を、忘れてしまっておりました。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



              おしまい

 






 

 


 












 


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『小さなお話し』 その114 やましん(テンパー) @yamashin-2

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