ラウジ街.2
「フレイか。いい名前だね」
ヘルマンはそう言ってまた私を見つめ続ける。私はあいまいにうなづく。エバーが何も言わなくなったので手を降ろした。
私はマゾンって知ってるかを聞こうとした時、ヘルマンの後ろから近づいてきた女の子二人がヘルマンに声をかけた。二人とも髪の毛を綺麗に着飾り色華やかな帽子と服を着ていた。
「ヘルマン、また女の子口説いてたの?でも子供じゃない。捕まるわよ」
ヘルマンは後ろを振り向いて答える。
「そんなんじゃないよ。この街の子じゃないみたいだ」
「居なくなる子に声をかけても意味ないじゃない。私達の相手をしなさいよ。暇だから声かけてたんでしょ。ほら早く」
と女の子二人はヘルマンを椅子から立たせる。
「また会えたら嬉しいね」
ヘルマンは私に笑って言った。
女の子二人はヘルマンを両方から抱えるように腕を組んだ。一人は振り返って私に冷たい視線を投げた。
色々な人がいるなぁ。と私は思った。
隣の机に座ってた人が、ヘルマンには近づかない方がいい。あれは人買いだからな。と教えてくれた。
私はありがとう。と答えて席を立った。
エバーから人買いの意味を聞く。女の子を斡旋してるんだ。あまりタチのよくない商人だな。と教えてもらった。
意味が分からなかったけど、いい人ではないのは分かった。
翌朝、違う通りを私は歩いた。ヘルマンがいい人なら表通りがよかったが違うみたいなので、あの通りより賑やかではない通りを歩き回り、見て回る。たくさんの人混みには慣れたけど、エバーの言う通り、私は世界を知らなさ過ぎてる。
エバーは、街の外で貴族や官僚達の馬車が襲われるのをフレイが助ければ恩を売れる。と言っていた。が、そもそも危ない道は通らないだろう。とエバーは自分の案を否定した。
兵士になるには女の子は無理そうとも言った。なので分かる限りの情報を集めよう。と結論つけた。
奥に行くほど人は少なくなり、店構えもみすぼらしくなってる。売ってる品物も質が落ちてる気がする。
地べたに座ってる男をチラホラ見かける。
突然、店の扉が空いて、若い女の嬌声が通りに響いた。五、六人の綺麗に着飾った女達が店から出てきた。私の横を通る。濃い花の香りが漂った。
一人の女が私に気付き、「なんかケモノ臭くない?」
と私を見て言った。他の女も私を見て笑った。
私は昨日身体を洗ったけどフードは洗ってないからかな?と思いフードの裾をかいだ。匂いはあまりしない。
その私の仕草を見て女達は大きく笑った。
バカにされた事は分かったが腹は立たなかった。あの女達は私とは住む世界が違うからだ。
それよりもどうやって情報を集めようかを考えながら通りを再び歩く。
上から、ねぇ。と声がかかる。私は見上げると、そこに昨日ヘルマンを連れて行った女の一人が二階の窓から顔を覗いてた。
「ヘルマンなら居ないよ」
と女は言った。私は、探してないけど、「ありがとう」と答えた。私はその時、お店の商人に片っ端から話を聞こうと思ってた。
「ねぇ、ここに来ない?服をあげるわ」
女は言った。私は小声で、
「エバー、どうする?」
と聞く。エバーは、フレイの好きに。と言った。
多分、自分で考えて動け。だろう。古びたフードだと目立つかも。と考え、私は二階にいる女にうなづいた。女が指差した階段を上がる。上がってすぐの部屋の扉が空いていて女が待っていた。
小さな部屋だったが、壁の至る所に色鮮やかな服がかけてあった。
「あんた、独りで大変みたいね。身体もまだ売れないし」
女は言った。私は意味が分からずあいまいにうなづいた。
女はサリーと名乗った。私も名乗る。
「悔しいと思うけどやっぱり貴方臭うわよ」
とサリーは笑って私のフードを脱がす。エバーが現れ、サリーが、「なにこれ?」と驚いた。
「ごめんなさい。私の友達なの。変な事はしないわ」
私は言った。
「玩物ね。ビックリしたわ。スライムなんて珍しいわね」
サリーは言い、エバーを指でつついて、はじめまして。とサリーはエバーに挨拶をした。エバーは何も言わずにサリーが落としたフードに潜り込んだ。
「どの服が欲しい?」
と、サリーはエバーに興味を失ったのか、服を何着か私に見せた。
どれも裾の長いスカートで、戦うには不向きの服だった。手にして見るものの、どの服にも邪魔な装飾が付いている。
「あら?どれも可愛くなの?」
「いえ、可愛いですけど、た、、実用的でなくて」
私は答える。危うく、戦いにくい。と言うとこだった。
「実用的なのは可愛くないし、そんなんじゃ男は振り向かないわ」
サリーは言う。男に気に入られるのがサリーには大切な事みたいだった。
私は、これは?と聞く。普通の服とズボン。
「これは部屋に居る時に着る服よ。そんなんでいいならあげるけど。本当にいいの?あっ、ひょっとして勘違いしてない?別に同情してるわけじゃないのよ」
サリーはよく喋る。サリーは一人で喋りながら、服を袋に入れる。
階段から大きな音を立てて上がる音が聞こえた。サリーの顔色が変わるのに気づいた。の同時に、サリーの部屋の扉が大きな音を立てて空いた。
「まだ用意できないのか?」
大きな身体の男。一目見て悪い男と分かった。サリーは、ごめんなさい。すぐ用意するから。と怯える。
男はズカズカと入り、サリーを叩こうとする。私は思わず男の手を掴んだ。男は、なんだお前は?と言いながらもう片方の手で私をつき飛ばそうとする。
私は掴んでた手を下へ曲げ下げる。男は腕を真逆に曲げられ片膝をつく。
私は手を離さず立たせて、部屋から出す。
サリーが我に返り、「フレイ、辞めて」と叫んだ。
私は手を離す。男は腕をさすりながら、テメェはなんだ?と聞く。
「貴方、悪い人?」
私は答えずに聞く。悪い人なら許さない。
騒ぎを聞いて他の部屋から女の人達が顔を出す。
恥をかかされた男の顔が怒りで赤くなってる。私に殴りかかる。私は簡単によけて男の片方の裏のヒザを足で踏む。男はまた床に倒れこむがすぐ立ち上がり私に向かって体当たりをして来た。私は低くかがみ込み男の身体が頭に乗った時に勢いつけて立ち上がった。男はつんのめり、派手な音を立てながら階段を転がり落ちた。
見ていた女達が歓声を上げた。不安と心配な顔をしてたのはサリーだけだった。
サリーが私に「なんて事したの?」と怒った。
「悪い人なんでしょ」
私は答えたが、サリーは、
「後で私が酷い目にあうのよ。もう帰って。声かけるんじゃなかったわ」
と言って泣き伏せた。私はわけが分からなかった。私はフードとエバーを掴み階段を降りた。男は下で気絶していた。
たくさんの人が集まっていた。エバーに、どうしようかと聞こうと思ったが、きっと黙ったままだろう。そう判断した私は、男を起こし目を覚まさせた。
「ねぇ、なんでサリーを殴ろうとしたの?」
起きた男に言った。普通に声をかければ済むはずなのに。私は本気で思った。
男は答えずに私の首を掴み締めた。私は男の目を突き刺そうと二本の指に力を入れた。
「離せ。ゴッツ」
声はヘルマンだった。男は私の首から手を離した。
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