迷いの森.3
ガーリーが森の奥を覗き込むようにあちこち動き回る。
「もう少しトゥリを信用しろよ」
ゼリーが言う。
「分かってるよ。でもなトゥリは他の娘と違って身体は丈夫じゃないんだぞ」
「他のお嬢様達は不安に思ってませんよ」
マゾンの言葉にガーリーは娘達を見る。
確かに娘達はトゥリを心配していない。娘達は、同化のツタを探してる。クロとヤミだけが見つかるのが上手く同化のツタを切り採ってる。
「クロ嬢様。そのツタを高く買い取りますよ」
マゾンはクロ相手に交渉し始める。
リカヒとウォッタは全く分からないわ。と言い合って諦めた。チッツとベリルはツタ探しよりも森にある石を見つけ話し合ってる。
ガーリーが森の奥からバインのツタが動くのを見つけ、娘達に伝える。
皆はツタがうごめいてる方を見る。一つの小さな灯りと人影。
「トゥリだ」
チッツが叫ぶ。トゥリの歩く先をバインのツタがどいてく。小さな光がトゥリよりも先にガーリーの所に来て言った。
「あら、貴方達がトゥリのシモベね。ティンクよ。トゥリの道案内になったのよ。つまり貴方よりも立場が上って事。まぁ、そこんところしっかりと理解してね」
とティンクはガーリー達の周りを飛び回りながら言った。
トゥリが来て、起きた事を全て話した。
「つまり、トゥリが世界中全ての草木とドルイドと妖精に認められたって事か?」
ガーリーが聞く。信じられなかった。
「そう言ってるじゃない。大人なのに分かんなかったの?」
とティンク。トゥリがティンクをたしなめる。
「トゥリって凄いね」
と娘達がトゥリを褒める。トゥリは恥ずかしくて下を向くも笑みが浮かぶ。
「ティンクは最初から見抜いてたわよ。とにかくトゥリの次に偉いのはティンクだからね」
トゥリがティンクを掴もうとする。も、ティンクは避ける。
「なんだこのマゾンみたいに生意気なのは」
ガーリーは言う。
「案内役のティンクよ。さっき言ったじゃない。迷いの森の中でママンの次に偉いのがティンクよ」
ティンクが言う。
「フェアリーってここに居るのか?」
「それが見えないだけで居るのよ」
トゥリがガーリーに言った。
「ティンクのように意識が高い種族じゃないと見えないのよ。他に見える人いる?」
誰も答えない。
「あら、皆意識が低いのね。つまりティンクの下ね。ティンクには見えてるもの」
「ティンク、少し黙ってて」
トゥリが怒る。
「あらごめんね。悪気はないのよ。多分」
ティンクは懲りない。
「本当にフェアリー居るのか?」
ガーリーがトゥリに言う。
「見たい?」トゥリの言葉に全員がうなづく。トゥリは、森に向かって言った。
「平和の国を造ろうとしてる人達よ。皆の仲間。少し姿を見せて」
途端、物凄い数の光の点が森の中に点く。ユラユラと宙を舞っている。
トゥリも驚いた。これほどの多さとは思ってなかった。
「ティンクは顔を見せて」
トゥリがティンクに言う。
「フェアリーは顔を見せないものよ。さっき話したでしょ」
「仲間には見せるものよ。少なくとも私の仲間にはね」
「仕方ないわね。少しだけよ。恥ずかしいから」
とティンクは光を消した。すぐにトゥリの後ろに飛んで隠れた。
マゾンが呟いた。
「ガーリーと居ると本当に退屈しなくてすみますな」
迷いの森から離れる。ママンが最終の棲む場所を[パライソ]と言っていたので、ガーリー達も[パライソ]と呼ぶ事にした。
場所はティンクが知ってるが、聞こうとしてもティンクは教えなかった。
「ティンクが教えるの。ティンクだけならあっという間。でも飛べない皆と一緒だとけっこうかかるわ」
ガーリー達はティンクに従う他なかった。
マゾンは一旦自宅へ戻りたかったが、ティンクが行き先を教えてくれないため、ガーリーから離れる事が出来なかった。仕方なく村を見つけるたびに立ち寄り、再び、伝言を送ってもらう。
ドルイドやフェアリー達の最期の棲み家と言われるだけあって、北のエルフ、南の人間の国とは違う東の方だった。西は日が沈むのが早いせいで魔物達が多くいるのです。とマゾンは言った。
途中、滅びの村を何か所か通る。ここから東はもう人間は居ないぞ。と村人は言った。この村が最後の村だった。
北へ向かえばダークエルフの村があるらしいが交流は無いと言う。なんでこんな所に住んでるんだ?と村人に聞くと、ここで産まれたからなぁ。と返ってくる。
子供達は皆大きくなると村から出さしてる。ここは誰も居なくする。ここも滅びの村の一つとなる。
「魔物には襲われないのか?」
「襲われた事はない。五日ほど歩くと大きな崖というか地面が割れてる所があり魔物達はそこに棲みついている。おそらくたくさん大ナメクジがおるんじゃないか」
と南の方を指差しながら村長が言う。ガーリーはうなづく。
「ティンク。パライソはまだ遠いのか?」
「ティンクだけだと一日かかるわね。皆だと五日くらい?三日かも?十日かも?」
地図を書いてもらったが、全然理解出来なかった。ティンクは丸を描いてその真ん中にバツを描いた。
「この丸はなんだ?」
「森ね」
「ここがパライソか?」
とガーリーはバツの箇所を指差して言った。
「そうよ。見て分からなかった?」
「その向こうはどうなってる?」
「大きな海。そこはたくさん島があるわ。海は嫌いよ。羽がダメになるもの」
ティンクとは話にならず、村の人に聞く。
「滅びの村に住んでもいいか?」
「別に構わんが、住む理由がないじゃろ?死にゆくだけじゃ」
次にガーリーはダークエルフの村へ向かう。村とは呼ばない。五軒ほどの家屋。そのなかの一軒家に誰か住んでる気配はあるのだが出て来ない。リカヒが挨拶をし他の娘達も挨拶をし、ようやく扉から顔を出し、出て来た。
この村には、もうその二人しか住んでいなかった事を知った。はぐれエルフの夫婦。二人とも純血なエルフだった。夫がエフ。嫁がカイラと名乗った。百歳は過ぎていて、リカヒ達を歓迎した。
「子供は一人として産まれない。頑張ってはいるんだけどな」
とエフはカイラの手をとり笑いながら言った。
何故ここに?とガーリーは聞くと、
「昔は四十人ほど居たんがな。皆、行ってしまった。帰って来て誰もおらんかったら寂しいだろう?だから私らは残ってる」
との答え。
「帰って来た人は誰も居ないけどね」
とカイラが寂しそうに言った。
「襲われたらとうするの?」
リカヒが聞いた。
「俺達には子供は居ないが、玩物は多いんだ」
とエフが答え口笛を短く吹いた。現れたのはたくさんのオオカミ達。
「三代目じゃな。毎年子供達を産むのが羨ましいて」
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