第14話 エンディング

松明にライターで火をつけ、足元に気を付けながら降りていく


「きゃぁ!」


どこから入り込んだのか、蝙蝠が飛び出してきた


「びっくりしたわね」


ミサは、言うほど驚いていないように見える。階段を降りると、洞窟のような広い空間があった


「ここは、溶岩洞窟を使って作られたのかな?」


僕は鉄でできた扉を見つけた。僕たちは、みんなで扉を押すが、ビクともしない


「みて、ここ、何かはめ込む場所がある」


エミリが指さしたところに、小さなくぼみがあった


「もしかして、これかな?」


僕は初日に海岸で拾ったペンダントをはめ込んでみると、鉄の扉が開いた。入って右手の方には、地底湖があり、左手は通路が続いている。地底湖を眺めていると、何か泳いでいるのが見えた


「なんだろう?」


「あ、イルカだ!」


エミリは「どこから来たの?」と聞くと、イルカは「キュイ」と答えた


「ここの湖、外の海と繋がっているみたい」


海から紛れ込んだ魚が取りやすいのか、イルカが数頭ここに居るようだ


左手の通路を奥へ進むと、木の扉がいくつか見えた。僕達は一部屋ずつ確認していく。一番手前の部屋は、食料部屋のようで、残念ながら腐りきってしまったのか、今は何も無かった。次の部屋は、ガラクタ置き場のようで、人が何かをしていたという痕跡は分かった。最後の部屋は、監視部屋のようで、モニターが並んでいるが、電源が入らないため、何をしていたか分からない


「ここは……実験室?」


モニターの横に、鉄でできた扉があり、鍵がかかっていなかったため、簡単に開いた。実験室の中には、研究日誌があった。僕は手に取って中身を見てみる


「これ……未来の日付だ」


「え?!どういう事?」


「ここを見てみて、最新の日付が35年後だ」


「本当だ……なんで?」


研究日誌を読んでみようと思った時、また地震が起きた


「地震だ! 早く脱出しよう!」


僕たちは、急いで研究室を出て、通路を戻る。しかし、鉄の扉ごと天井が崩れて通れなくなっていた


「どうしよう!!これじゃ出られない!」


エミリが泣き崩れるように座り込んだ。その間も、どんどん地下空間が崩れ始めている


「諦めないで、ママ!」


「え?ママ?」


僕はポカンとしてミサを見た


「イルカよ、イルカにお願いして外に出ましょう!」


「わ、わかったわ、お願いしてみる!」


エミリがまだ逃げ出していなかったイルカに話しかけると、餌と引き換えに外に連れて行ってくれるようだ


「じゃあ、この袋を口に当てて!酸素ボンベ代わりよ」


ミサは持っていたカバンからビニール袋を取り出すと、空気を入れて渡してくれた。僕たちは一人一頭ずつイルカに掴まると、ぐんぐんと泳いでいった。たった数分の事だろうけど、何十分も水中にいたようにどっと疲れが出てきた


「なんとか、脱出できたね」


イルカが出たところは、廃船の側だった


「全部思い出したわ、パパ、ママ」


「どういう事?意味が分かんないよ!」


エミリは困惑したように叫ぶ


「落ち着いてママ、地震のショックで全部思い出したの」


ミサが語ってくれた話では、35年前、僕とエミリはこの無人島を無事脱出できたらしい。それから10年がたって、研究員となった僕とエミリはこの島を研究場所として利用するそうだ。3年後、僕とエミリが結婚して生まれたのが、ミサらしい


それから10年間、僕とエミリはこの島で研究員として働いていたそうだ。しかし、地震があり、その影響で島全体が毒ガスに覆われて住めなくなってしまったらしい。その後、他の場所で研究を続けたらしいが、反対派のテロに遭って僕とエミリは死んでしまうらしい


「ママ達が研究していたのは、人間が超能力を得る研究よ」


ミサは実験体として、他の研究員に無理やり改造されたらしい


「パパとママは、オリジナルの超能力者よ。パパの能力はタイムリープ、つまり時間跳躍ね。ママの能力はテレパシー、つまり念話よ」


「ここが未来の世界なら、疑いようがないな……どおりでいつまでたっても救助が来ないわけだ」


「私も、なんとなく動物の言葉が分かる理由が分かっわ」


「そして、この話を聞いていた私が、この島に来たってわけ」


「だから、航海日誌もなかったのか。それにしても、事故って記憶を失うとかドジだな、ミサは」


「もぉ、パパのいじわる!」


どう見ても大人と子供なのに、立場は逆転していた


「結局、ミサには能力がついたのか?」


「私は、未来予知かな。好きなようには見れないけど、今日ここにパパとママが来るのが分かったから会いに来たの」


「……これから、どうすればいい?」


「パパとママは、元の時代に帰って、ちゃんと私を生んでほしい。あ、研究はしないほうがいいよ、殺されちゃうから」


「ミサはどうするの?」


「私は、クルーザーを修理して脱出する。壊れた所は、この廃船から部品を取るわ」


「超能力ってどうやって使うんだ?」


「私は、普通に使えてるけど?」


「私は、自分でコントロールできないし」


それから数日間は、ミサと一緒にクルーザーの修理に奔走した。疲れたときに、温泉にみんなで入ったり、魚を釣ったり、イルカと一緒に泳いだりして楽しんだ


クルーザーの修理が終わる頃、再び大きな地震が来た


「大きいわ!もしかしたら、島が噴火するのかもしれない!」


僕たちはクルーザーに慌てて乗ると、急いで島を離れた。数キロ離れたとき、大きな噴火が起きた


「危なかったね、このまま島に居たら、溶岩に殺されるところだったよ」


「噴火の未来までは見えてなかったわねぇ」


「あ、イルカさんたちも逃げてきたみたい」


エミリが指さす方を見ると、イルカが並走していた。突然、僕は超能力の使い方が分かる気がした


「……お別れなのね?」


ミサが雰囲気を察したのか、悲しそうな顔をする


「ミサ、私はミサを必ず幸せにするから」


「僕もだ。必ず、ミサとエミリを幸せにするから」


「うん、お願いね」


僕とエミリは手を繋ぐと、光に包まれた


「元の時代に戻ってきたのかな?」


「僕の感覚だと、戻ってきてるはずなんだけど。ここに島があるのがその証拠じゃない?」


「けど、いつかは分からないわね」


「見て、ヘリコプターだ!」


僕たちは無事に元の時代に戻れたらしい。ヘリコプターは、事故の知らせを受けた救助ヘリだったからだ


「エミリ、大きくなったら結婚しよう」


「うん、そして、子供にはミサってつけてあげないとね」


「ああ、どんな漢字にしようかな?」


「美しい砂と書いて、美砂はどう?」


エミリはヘリが飛び立った砂浜を見て決めたようだ


「うん、それでいいよ」


そして、この話を子供に聞かせてあげないとな


END


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る