第9話 廃船

僕達は、朝起きると、再び島の探索をすることにした


「あっ、見て、こっちに道がある!」


エミリが指さした場所に、砂利が引いてある道があった


その道に沿って歩いていくと、大木が積み重なるように道を塞いでいた


「これを通るのは、苦労しそうだね」


僕がそういうと、モトヤが木に近づいていく


「これなら何とかなりそうだ」


モトヤがそう言うと、大木を持ち上げた


「すごい!モトヤすごい!」


エミリが目を丸くして褒める


「俺は1日に数回だけ、溜めた力を解放できるんだ」


漂流していた間、力を使っていなかったので、結構力が溜まっていたらしい


モトヤに大木をずらしてもらい、道の先に進むことができるようになった


人の背の高さくらいある草をかき分けて進むと、船があった


「これは、漁船?」


「調査船……かもね」


洞窟内に住んでいた人が使っていたのだろうか?使われなくなってから結構経っているようだ


「ここに住んでいた人は、脱出できなかったのかな……」


船がここにあるということは、一生をこの島で過ごしたのだろう


「他の船で出て行ったのかもしれないよ」


モトヤは、「確率は低いけど」と、付け加える


残念ながら、船の中にはめぼしいものは何もなかった


「あっ、ドラム缶がある」


簡易テーブルにでも使っていたのだろうか?ドラム缶が一つ置いてあった


「ねぇ、これをお風呂にしない?」


「お湯をこれだけ沸かすのに、燃料を使いすぎるよ。それに、使い終わった水を捨てるのも大変そうだ」


僕がそういうと、エミリはションボリした顔になった


「燃料になる木は俺が運ぶし、水も俺が逆さにして捨ててやるよ」


「本当!?」


エミリの顔がパァッと明るくなる。僕は喜ぶエミリを見て、モトヤに嫉妬心を感じた


「久しぶりのお風呂だぁ、うれしいなぁ。シャンプーなんかの小ボトルもあるし」


エミリはウキウキとお風呂に入る準備をしている


「もう少し、探検してからにしよう。まだ、食料も手に入れてないし」


「あっ、そうだね。ごめん」


エミリは素直に謝る


「近くに川があるぞ」


モトヤが指さした方を見ると、確かに川があった。僕たちは川で一旦水を補充した。その後、川を川上に向かって歩くと、小さいが湖があった。魚も泳いでいる


「魚がいる。釣ってやるよ」


モトヤはそういうと、木の枝と蔓で簡易釣り竿を作り、船に落ちていた空き缶をいつの間に拾っていたのか、空き缶のプルタブを取ると、石で削ってあっという間に釣り針にしてしまった


「モトヤさんは釣りが得意なの?」


「モトヤでいいよ。ああ、釣りが大好きで良くオヤジと釣りに行った。道具に頼るのは好きじゃなかったから、自作していたのも役に立ったかな」


モトヤはそういうと、石の下からミミズを捕まえて釣り針に刺し、餌にした


「えぇ、ミミズを食べた魚を食べるの?」


「ワタは抜くから大丈夫だよ。気分的に嫌なら、下流で捕まえる?」


僕がエミリにそう聞くと、「そっちのほうがいいかな」と言ったので、僕たちは下流へ行った


そろそろお昼になるかなという頃、下流でモトヤと合流した


「俺の釣果は5匹だ」


「僕たちは、1匹……」


こっちの川は、向こうの川よりも狭く、魚の動きが早くて捕まえられなかった。何とか追い込んだやつを素手で捕まえたのだ


「じゃあ、この1匹はエミリにあげるよ」


「うん、ありがとう!」


エミリには、魚1匹と昨日とっておいたキノコを焼いて渡す。モトヤは魚3匹、僕は魚2匹を食べる


「午後からは、他の場所へ行ってみようか」

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